熊本県西部、天草下島(しもしま)の西に広がる海域。潮流が強く、風波が荒い。北西は長崎県の野母(のも)崎、五島列島、南は黒ノ瀬戸、長島海峡と境している。北流する対馬(つしま)暖流の影響を受け、アジ、サバ、イワシなどのほか、カツオ、シイラ、タイ、イカなどの好漁場で、熊本県下では沖合・近海漁業のもっとも盛んな海域である。しかし日本近海の水産資源の枯渇傾向の例に漏れず、最近ではとみに漁獲量が落ちている。これとは対照的に、天草五橋、黒ノ瀬戸大橋などの建設で、奇岩連なる磯浜(いそはま)への接近が容易になったことから、磯釣り、あるいは観光一本釣りの格好の釣り場になっている。したがって、天草灘の漁労に依存してきた漁民は民宿を兼ね、波濤(はとう)打つ妙見浦(みょうけんうら)(国の名勝・天然記念物)、十三仏崎(じゅうさんぶつざき)の断崖(だんがい)連なる豪快な景観と結び付け、天草灘を天草西岸観光のなかに位置づけようとしている。
[山口守人]
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