日本大百科全書(ニッポニカ) 「性器結核」の意味・わかりやすい解説
性器結核
せいきけっかく
性器にみられる続発性の結核症で、臨床的に多いのは男性の性器結核である。男性性器結核は精巣上体(副睾丸(ふくこうがん))、前立腺(ぜんりつせん)、精嚢(せいのう)腺などの結核症の総称であり、しばしば同時にみられるが、また腎臓(じんぞう)や膀胱(ぼうこう)などの尿路結核に併発することが多い。おもに肺などの結核病巣から血液によって腎臓に運ばれた結核菌が下行し、尿管を通って膀胱に達し、さらに尿道から精巣上体、前立腺、精嚢腺に達して結核性病変を形成することが多いが、精巣上体には肺から直接血液によって感染することもある。なお、まれではあるが陰茎に結核性病変の認められることもある。
精巣上体結核では精巣上体の硬結(しこり)、腫脹(しゅちょう)(はれ)、鈍痛などの症状を呈し、同時に精管にも結核性病変を生じた場合には、精管に数珠(じゅず)様の結節が認められる。また、ときに陰嚢皮膚に瘻孔(ろうこう)を形成し、膿汁(のうじゅう)を排出することがある。
前立腺結核では頻尿、排尿痛、会陰(えいん)部不快感などの症状を呈することもあるが、一般に症状は不明確で、腎結核や精巣上体結核の際に前立腺を触診した場合、前立腺に硬結や圧痛を認めることで診断されることが多い。
精嚢腺結核でも特有な症状はないが、ときに精液に血液が混入することがある。腎結核などの際に精液検査で白血球の混入が認められることから診断されることが多い。
治療は抗結核剤による化学療法が中心となるが、精巣上体結核に対しては手術の行われることもある。予後は一般に良好であるが、腎臓、尿管、膀胱などの尿路結核の程度に左右される。
[河田幸道]