性暴力(読み)せいぼうりょく(英語表記)sexual violence

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

性暴力
せいぼうりょく
sexual violence

社会的に形成される男女の性差(ジェンダー)に基づくあらゆる暴力行為。おもに女性に対して損害や苦痛を与え,人間としての尊厳を侵害する力の行使をさす。ドメスティック・バイオレンス DV,痴漢,ストーカー行為などがあげられるが,最も多いのが強姦(レイプ)である。日本の法律には性暴力の規定はなく,刑法暴行または脅迫を用いた猥褻な行為(強制猥褻),暴行または脅迫を用いた姦淫(強姦),それらに準じた行為,集団での強姦,各行為の未遂を犯罪とし,各都道府県ごとの迷惑防止条例とあわせて処罰の対象としている。こうした性犯罪は親告罪であり,捜査には被害者からの告発,請求,告訴を要するため,告発に際し被害者が二次的苦痛(いわゆるセカンド・レイプ)を受けることが多い。性被害者は心的外傷後ストレス障害 PTSDの症状に苦しむことが多く,医療的ケア,カウンセリング,経済的援助など,総合的な支援が求められる。(→強姦罪配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律

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百科事典マイペディアの解説

性暴力【せいぼうりょく】

英語ではsexual violence,gender-based violence。男性中心社会における男女間の力関係の不均衡を不当に利用して,男性が女性に暴力をふるうこと。とくに女性の合意を得ずに,性的行為を行うことをいう。レイプ,セクシュアル・ハラスメント,幼女や障害者への虐待,家庭内暴力ポルノグラフィー,強制売春(買売春)などの総称。ごく近年まで,男性の性暴力を仕方がないことと考える風潮が社会全体に根強く,法もまたそのような偏見に従っていた。その中では,〈男性の性欲は本能だからどうしてもはけ口を必要とするのだ〉とか,〈暴力をふるわれた女性の方に何かしらスキがあったはずだ〉などと,男性の性暴力を正当化するさまざまな説明が持ち出されてきた。しかしウーマン・リブなどの女性解放運動の進展とともに,女性が女性であるという理由で暴力を受けることがなく,性差別のない社会を求めることやその実現は,女性が人間として生きていく上での当たり前の権利であるという認識が広まってきた。被害者ネットワークや救援グループなどがつくられ,被害の経験を語れるような環境がようやくできつつある。その結果,加害者になるのは見ず知らずの男性だけではなく,父親,夫,恋人,上司など,ごく身近な男性たちでもあることが明らかになってきた。とくに夫やパートナーからの暴力はドメスティック・バイオレンス(DV)として顕在化してきている。これは世界的な認識で,たとえば1993年12月の国連総会では,〈女性に対する暴力〉を〈身体的,性的,心理的に有害または苦痛となるジェンダーに基づくあらゆる暴力行為で,公的私的な場を問わない〉と広く定義して,その撤廃を謳っている。性暴力という問題に関して最優先されるべきは,被害にあった女性がどのように体験を克服していくかであり,そこに処方箋はない。しかし日本でも1998年5月には性暴力裁判全国弁護士ネットワークが発足し,訴訟資料の収集,性暴力禁止法の研究,告訴相談などを行っており,1999年10月には性暴力被害に関わってきた産婦人科医,弁護士,精神科医ら女性グループが〈女性の安全と健康のための支援教育センター〉を設立した。強姦罪被害者学の項目も参照。
→関連項目アダルト・チルドレン

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大辞林 第三版の解説

せいぼうりょく【性暴力】

主として男性が女性を暴力により性的に侵害すること。あるいは、他者を侵害する目的で性的な攻撃を加えること。強姦・暴行など。

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