慣・馴・狎・熟(読み)なれる

精選版 日本国語大辞典 「慣・馴・狎・熟」の意味・読み・例文・類語

な・れる【慣・馴・狎・熟】

〘自ラ下一〙 な・る 〘自ラ下二〙
① あるものや事態にたびたび出会ったり経験したりしたために常のこととなる。珍しくなくなる。
源氏(1001‐14頃)桐壺「年ごろ、常のあつしさになり給へれば、御目なれて、猶しばし心みよと、のみの給はするに、日々におもり給ひて」
② たびたび行なってそのことに熟達する。習熟する。さらに、よく気がきく、巧みであるなどの意としても用いる。
※宇津保(970‐999頃)国譲上「中納言殿は、いとささやかになれたる人の、らうらうじきなり」
随筆槐記‐享保一二年(1727)八月晦日「これより大なる事を仕ても、あちへ馴れたる人は、目にたたず咎めもなし」
③ 親しむ。近付きになって、気持の上でも親しくなることをいう。
万葉(8C後)一四・三五七六「苗代の小水葱(こなぎ)が花を衣(きぬ)に摺り奈流留(ナルル)まにまにあぜか愛(かな)しけ」
金槐集(1213)恋「春やあらぬ月は見し夜の空ながらなれし昔の影ぞ恋しき
④ あまりにもなれなれしくふるまう。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
※源氏(1001‐14頃)若菜下「はばかりもなく聞ゆ。心やすく、若くおはすれば、なれ聞えたるなめり」
衣類などがからだになじむ。着なれて、ふだん着のように気楽に着こなせるさまについていう。
※万葉(8C後)九・一七八七「紐解かず 丸寐をすれば 吾が着たる 衣は奈礼(ナレ)ぬ」
⑥ 長く使って、古くなる。みすぼらしくなる。やつれる。
※源氏(1001‐14頃)蓬生「御調度どもを、いと古体になれたるが、昔様にてうるはしきを」
食べ物などが新鮮でなくなる。腐る。
七十一番職人歌合(1500頃か)一五番「はやくこそ六角町のうり魚のなれぬ先よりかはりはてけれ」
すしなど、ほどよく時間がたって、味加減がよくなる。熟成する。熟す。
料理物語(1643)二〇「一夜ずしの仕様〈略〉一夜になれ申」

なれ【慣・馴・狎・熟】

〘名〙 (動詞「なれる(慣)」の連用形名詞化)
① たびたび経験して常のこととなったり、平気になったりすること。また、たびたび行なってそのことに熟達すること。
※浄瑠璃・義経千本桜(1747)三「流石酢やの娘迚(とて)、早い馴(ナレ)とぞ見へにける」
② 長く使って古くなること。
浮世草子諸道聴耳世間猿(1766)一「少々なれも見ゆれば、よい払ひ直段であらふに」
③ すしなど、時間がたって味加減がよくなること。また、そのぐあい。熟成のぐあい。
※浄瑠璃・義経千本桜(1747)三「娘が漬た酢ならば、なれがよかろと、買にくる」

な・る【慣・馴・狎・熟】

〘自ラ下二〙 ⇒なれる(慣)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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