慣性モーメント(読み)かんせいもーめんと

日本大百科全書(ニッポニカ) 「慣性モーメント」の意味・わかりやすい解説

慣性モーメント
かんせいもーめんと

質点系の各質点の質量mに、ある一定直線までのそれぞれの距離rの2乗を掛けて全部について加えた量Σmiri2を、その直線に関する質点系の慣性モーメントという。剛体の場合は微小部分に分け、各部分の質量dmに距離rの2乗を掛け、全体に対して積分することによって

で与えられる。したがって慣性モーメントは、質量が大きく、かつ回転軸から遠くに分布するほど大きくなる。

 直角座標系の原点を通る一定直線(方向余弦λ、μ、ν)に関する剛体の慣性モーメントIは
  I=λ2Ixx+μ2Iyy+ν2Izz-2λμIxy
    -2μνIyz-2νλIzx
である。ただし

Ιxx、Ιyy、Ιzzをそれぞれx、y、z軸に関する慣性モーメント、Ixy、Iyz、Izxを慣性乗積という。適当な方向に直角座標軸を選ぶと慣性乗積が三つともゼロとなる。この場合の座標軸を慣性の主軸といい、Ixx、Iyy、Izzを主慣性モーメントとよぶ。

 ある直線に関する物体の慣性モーメントIをその全質量Mで割ったk2=I/Mより定められるkを回転半径という。すなわち、物体は質量Mの一つの質点が回転軸からkの距離にあると同じ慣性モーメントをもつことになる。また物体の重心を通る軸に関する慣性モーメントをIgとすると、その軸からdだけ離れた平行軸に関する慣性モーメントIはI=Ig+Md2で与えられ、これを平行軸の定理という。

[村岡光男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「慣性モーメント」の意味・わかりやすい解説

慣性モーメント
かんせいモーメント
moment of inertia

慣性能率ともいう。回転する物体がその回転運動を持続しようとする慣性の大きさを表わす量で,並進運動の慣性の大きさを表わす質量に対応する。物体を微小部分に分け,その各部分の質量を dmdm 部分からある直線までの垂直距離r とするとき,r2dm を物体全体について総和した量 Σr2dm をその直線に関する慣性モーメントという。連続物体のときには,総和の代りに物体全体にわたる積分 ∫r2dm で定義される。慣性モーメント I は (質量)×(長さ)2 の次元をもち,物体の全質量 M とある長さ k とにより IMk2 と表わすことがある。長さ k を回転半径という。慣性モーメントは物体の形と質量分布とによって決り,簡単な形の均一物体の慣性モーメントや回転半径の値は数値表で与えられている。慣性モーメントは分子原子核の回転に関しても重要である。

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