懸賞広告(読み)ケンショウコウコク(英語表記)prize advertising

デジタル大辞泉 「懸賞広告」の意味・読み・例文・類語

けんしょう‐こうこく〔ケンシヤウクワウコク〕【懸賞広告】

ある行為を指定し、それを行った者に報酬を与える旨を知らせる広告。

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精選版 日本国語大辞典 「懸賞広告」の意味・読み・例文・類語

けんしょう‐こうこくケンシャウクヮウコク【懸賞広告】

  1. 〘 名詞 〙 ある特定の行為をした者に報酬を与えることを表わした広告。また、優等者だけに報酬が与えられる優等懸賞広告もある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「懸賞広告」の意味・わかりやすい解説

懸賞広告
けんしょうこうこく
prize advertising

ある条件を設けて一般消費者に呼びかけ、応募者に対して賞金や景品など一定の報酬を供することをうたった広告。懸賞広告は販売促進という広告本来の役割を果たすというより、広告の注目率を高めると同時に関連商品やサービスに対する話題を喚起するため、日本でも商慣行として定着し、今日に至っている。しかし、この懸賞という手法は、過大な景品を提供して公正な競争を妨げ、消費者の射幸心をいたずらにあおるとして非難の的とされ、とくに昭和30年代に入ってからは賞金額の過当競争が激化して社会問題に発展した。これを機に1962年(昭和37)に不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号、通称景表法)が制定されることになり、懸賞広告は法規制の対象とされるに至った。また、1971年(昭和46)にはオープン懸賞広告について私的独占の禁止及び公正取引確保に関する法律(昭和22年法律第54号、通称独禁法)に基づく規制が打ち出された。以来各業界は過当競争を避ける目的で、それぞれ公正競争規約を制定し自粛してきたが、1996年(平成8)に懸賞の制限金額が大幅緩和され、さらに2006年には規制が廃止された。これにより懸賞広告はふたたび注目を集めるようになった。以下、懸賞広告を規制の視点から解説する。

[伊藤誠二]

オープン懸賞広告

商品やサービスの購入を条件とするクローズド懸賞に対し、購入を前提とせず、自由にだれでも応募できるオープン懸賞は、商品などの販売促進に直接結び付かないところから景表法規制の対象外であった。ところが、巨額の海外旅行招待などが頻発したため、公正取引委員会は「顧客を誘引する手段として、広告において、一般消費者に対し、くじその他の方法により特定の者を選び、これに正常な商慣習に照らして過大な金銭物品その他の経済上の利益(=100万円以上)を提供する旨を申し出ること」は独禁法の「不公正な取引方法」にあたると、特殊指定(昭和46年公取委告示34号)し、この取締りに踏み切った。つまり、100万円以上の経済上の利益の提供をうたうオープン懸賞広告は、それ自体が独禁法違反に問われるとしたわけである。しかし、1990年代に入って企業活動に対する規制緩和が進み、1996年(平成8)に懸賞制限金額が100万円から1000万円に大幅緩和された。さらに、2006年に規制が撤廃され、上限はなくなった。

[伊藤誠二]

懸賞による景品類の提供広告

景表法第2条およびそれに基づいて公取委が指定した景品類とは、「顧客を誘引する手段として、方法のいかんを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益」であって、「値引、アフターサービス、付属物を含まないもの」である。つまり、オープン懸賞の賞品とは違って、景品類とは、商品または役務の「取引に付随」することを要件としている。こうした定義のうえで、公取委の告示は、くじその他の偶然性を利用したり、特定の行為の優劣や正誤によって当選者を決める、懸賞による景品類の提供は、定められた制限額を超えてはならない、としている。したがって制限額をオーバーした景品類の提供を広告すれば、その広告は違反に問われることになる。2011年時点でのクローズド懸賞による景品類の制限について、以下に説明する。

 景品類の提供方法は総付(そうづけ)景品、一般懸賞、共同懸賞に分類され、それぞれ提供できる景品類の価格などに制限がある。総付景品はべた付け景品ともよばれ、商品購入者・小売店来店者全員、申込み順または入店の先着順といったかたちで、懸賞によらずに景品類を提供するものをさす。一般懸賞とは、商品やサービス利用者に対し、くじなどの偶然性や、特定行為の優劣などによって景品類を提供するものをいう(共同懸賞を除く)。共同懸賞は、ショッピングセンター内の複数の店舗や事業者が共同で行う懸賞のことである。

(1)総付景品の場合 景品類の最高額は、取引価額が1000円未満では200円、取引価額が1000円以上では取引価額の10分の2とする。

(2)一般懸賞の場合 取引価額が5000円未満では、景品類の最高額は取引価額の20倍、総額は売上予定総額の2%とする。取引価額が5000円以上では、景品類の最高額は10万円、総額は売上予定総額の2%とする。

(3)共同懸賞の場合 景品類の最高額は、取引価額にかかわらず30万円、総額は売上予定総額の3%とする。

[伊藤誠二]

業種別の懸賞制限

医薬品、医薬部外品、化粧品および医療用具は、薬事法(昭和35年法律第145号)により規制を受ける。同法に基づく医薬品等適正広告基準第3の11では「ゆきすぎた懸賞、賞品等射こう心をそそる方法による医薬品等又は企業の広告は行なわないものとする」と規定している。これにより、かつては相当にきびしく規制されたが、現在では「医薬品の過量消費または乱用助長を促す広告は認められない」趣旨に読みかえられ、景表法の限度内であれば認められるに至っている。なお、オープン懸賞での制限金額は前述のとおり各業種において撤廃されている。一方で新聞業における景品類の提供に関しては、景表法で「最高額は懸賞に係る取引価額の10倍または5万円のいずれか低い金額」か「景品類の総額は懸賞に係る取引予定額の1000分の7金額」の範囲と規制されている。

[伊藤誠二]

その後の動き

2014年(平成26)薬事法が改正され、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」に名称変更された。現在、医薬品等の広告については「医薬品医療機器等法」(66条~68条)および「医薬品等適正広告基準(2017年改正)」に基づき、規制されている。

[編集部]

『豊田彰著『広告の表現と法規』(1996・電通)』『嶋村和恵監修『新しい広告』(2006・電通)』

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改訂新版 世界大百科事典 「懸賞広告」の意味・わかりやすい解説

懸賞広告 (けんしょうこうこく)

たとえば,迷い犬を探してくれた人に,あるいは紛失した書類を届けてくれた人に金何万円を進呈するというように,特定の行為をした者に一定の報酬を与えることを,広告の方法で表示することをいう(民法529~531条)。広告を知らずに所定の行為をした者も報酬を受け取れるかどうかをめぐって,懸賞広告は契約の申込み(申込み・承諾)なのか,一種の条件つきの義務を負担する単独行為なのか,説が分かれている。広告を知らずに所定の行為をした者は,前説だと報酬がもらえないが,後説だともらえることになる。日本の民法は懸賞広告を〈契約〉の章に規定しているが,ほかに単独行為としてのそれを認めてもよいし,実際にはむしろそのほうが多いと思われる。契約だとすれば,所定行為の完了が承諾と解される。数人が所定の行為をしたときは,原則として最初の者が報酬をもらうことになる(531条)。なお,以上に述べたほかに,懸賞論文や懸賞小説のように優秀な者だけに報酬を与える優等懸賞広告(532条)がある。これは応募の期間を定めてなされなければならず,また優秀者の判定者は広告に定めた者または広告者で,応募者はその判定に異議を述べることはできないとされている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「懸賞広告」の意味・わかりやすい解説

懸賞広告
けんしょうこうこく
Auslobung

不特定多数人に対して,特定の行為をした者に一定の報酬を与える旨を,広告の方法によって表示すること (民法 529) 。たとえば,盗まれた自動車を発見した者に 10万円与える旨を新聞に広告するなどである。懸賞広告の法的性質については学説が分れており,契約の申込みと解する立場と,指定行為の完了を停止条件として広告者が報酬支払い義務を負担する旨の一方的意思表示と解する立場とがある。前説によれば,指定行為を完了した者は広告の存在を知ってしなければ報酬請求権を取得できないが,後説ではその必要はない。広告者は,期間を定めて広告しないかぎり,指定行為を完了した者がない間は,前の広告と同一の方法で広告を撤回することができる (530条) 。なお数人が指定行為を完了したときは,最初の完了者のみが報酬請求権を取得する (531条) 。

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世界大百科事典(旧版)内の懸賞広告の言及

【懸賞】より

…そのため懸賞募集に先だって,指定の行為を完遂したものに対してなんらかの報酬を供与する旨の広告が行われるのが普通である。このような広告は一般に〈懸賞広告〉と呼ばれ,その要件は民法によって厳密に規定されている。なお,テレビ媒体が発達した今日では,クイズ番組などを通して提供される懸賞が身近なものとなっているが,そうした事例の一つとして,1958年9月にアメリカのセント・ルイス市のテディ・ナドラーTeddy Nadlerが獲得した26万4000ドルの賞金などは,そのもっとも巨額なものであろう。…

※「懸賞広告」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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