成人スティル病(読み)せいじんスティルびょう(英語表記)Adult Still's disease

六訂版 家庭医学大全科 「成人スティル病」の解説

成人スティル病
せいじんスティルびょう
Adult Still's disease
(膠原病と原因不明の全身疾患)

どんな病気か

 小児期に発症した関節リウマチのうち、関節の症状だけでなく高熱発疹を来す病型を「スティル病」と呼んでいます。長い間、このスティル病は子どもにしかかからない病気と考えられていましたが、1971年に英国のバイウォータースが、大人(ここでは16歳以上)になって発病する患者さんがいることを発見し、「成人発症スティル病」として報告しました。

 現在では大人になってから発病したスティル病(成人発症スティル病)と、子どもの時に発病し、その後大人の年齢になって再燃した場合(小児発症スティル病の再燃)を併せて「成人スティル病」と総称しています。

原因は何か

 成人スティル病が発病する決定的な原因はよくわかっていません。近年、成人スティル病の患者さんでインターロイキン6あるいは18など「炎症を引き起こす液性因子」(サイトカイン)が著しく高くなっていることが知られ、関節リウマチで用いられるトシリズマブ(アクテムラ)やTNF阻害薬(生物学的製剤)が成人スティル病の新規治療薬として期待されています。

症状の現れ方

 原因不明の高熱(38℃以上)が数週間続く「不明熱」の場合、成人スティル病は考えなければいけない病気のひとつです。成人スティル病の最も特徴的な症状は皮膚の発疹です。うすいピンク色で、少し盛り上がり、熱のある時に前胸部や腕に出やすく、通常かゆみはありません。のどの痛みや関節の痛み、リンパ節はれもよくみられます。

 急性期には血清中の白血球数、CRP値、赤沈値、フェリチンという鉄代謝に関連する蛋白が著しく上昇します。しかし関節リウマチRA)や他の膠原病で陽性率の高いリウマチ反応抗核抗体はほとんどの場合、陰性です。

治療の方法

 成人スティル病の治療の中心は抗炎症療法で、非ステロイド性抗炎症薬が第一選択です。しかし、肝障害がある例や薬剤アレルギーがみられる例(成人スティル病の患者さんはアレルギーが多いといわれています)では継続が困難です。また、十分に解熱しないことも多く、中等量の副賢皮質ステロイド薬(プレドニンなど)が使われるケースが多いようです。

 ステロイド薬が十分効かなかった患者さんに対しては、免疫抑制薬であるメトトレキサート(リウマトレックス)やタクロリムス(プログラフ)が併用されることがあります。

患者さんが気をつけること

 ステロイド薬による治療が開始されたら、自己調節することなく、根気よく治療を続けることです。また、感染症骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などのステロイド薬による副作用にも注意してください。

藤井 隆夫


成人スティル病
せいじんスティルびょう
Adult Still's disease
(皮膚の病気)

どんな病気か

 スティル病は、小児のリウマトイド因子(関節リウマチに高頻度に認められる因子)陰性の多発関節炎で、関節以外の症状として、発熱、腱滑膜炎(けんかつまくえん)心膜炎脾腫(ひしゅ)、リンパ節腫大などを伴う疾患を指す名称です。

 これに対して、成人スティル病は弛張熱(しちょうねつ)(高熱と平熱を1日のうちに繰り返す熱型)、リウマトイド因子陰性の多関節炎および皮膚病変を主徴とする別の疾患です。

原因は何か

 感染アレルギー説、自己免疫説などがありますが不明です。

症状の現れ方

 高熱とともに特徴的発疹、関節痛が現れます。発疹は薄い紅色(サーモンピンク色)の紅斑が発熱とともに現れるのが特徴的で、かゆみはあまりありません。発疹にはバリエーションがあり、主なタイプにはやや盛り上がった丘疹性(きゅうしんせい)紅斑とじんま疹に類似するじんま疹様紅斑があります。

検査と診断

 赤血球沈降速度の亢進、CRP陽性、核の左方移動を伴う白血球の増加など感染症に類似する血液像を示します。リウマトイド因子は陰性であり、抗核抗体などの自己抗体は通常は認められません。重要な所見としては、血清フェリチン値が著しく増加します。

治療の方法

 ステロイド薬の内服治療が有効で、通常は少量で十分な効果が得られます。

病気に気づいたらどうする

 皮膚に発疹がある時はまず皮膚科専門医へ、発熱、関節痛が顕著で発疹がはっきりしない場合は、リウマチ膠原病(こうげんびょう)内科を受診してください。

関連項目

 膠原病

衛藤 光

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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