成羽植物群(読み)なりわしょくぶつぐん(その他表記)Nariwa flora

日本大百科全書(ニッポニカ) 「成羽植物群」の意味・わかりやすい解説

成羽植物群
なりわしょくぶつぐん
Nariwa flora

岡山県高梁(たかはし)市成羽町付近に発達する、中生代三畳紀後期の成羽層群から産する植物群。同じ三畳紀後期だがやや時代が古い、山口県美祢(みね)層群の美祢植物群ともよく似ており、楔葉(けつよう)類(トクサ類)をはじめとして、シダ類ベネチテス類ソテツ類イチョウ類、針葉樹類など数多くの植物が産出する。

 トクサ類としては、現生のトクサに似ているがそれよりは太く、茎の直径が5センチメートルもあるエクイセティテス・ムルティデンタトゥスEquisetites multidentatus、直径5センチメートル以上もある茎に線状の長い葉を輪生させるネオカラミテス・カレレイNeocalamites carrerei団扇(うちわ)状の葉をもつアヌラリオプシス・イノピナタAnnulariopsis inopinataシダ類としてはゼンマイ科のトディテスTodites、ヤブレガサウラボシ科のクラスロプテリスClathropteris、タウマトプテリスThaumatopteris、ディクティオフィルムDictyophyllum、ハウスマンニアHausmanniaなどがある。また、裸子植物では、ベネチテス類のプテロフィルムPterophyllum、オトザミテスOtozamites、プティロザミテスPtilozamites、ヤベイエラYabeiella、タエニオプテリスTaeniopterisソテツ類のニルソニアNilssonia、クテニスCtenis、イチョウ類のギンゴイテスGinkgoites、バイエラBaiera、針葉樹類のポドザミテスPodozamites、エラトクラドゥスElatocladus、ナゲイオプシスNageiopsisなどがある。これらの植生は、当時の温暖湿潤な気候を示唆している。

[浅間一男・西田治文]

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改訂新版 世界大百科事典 「成羽植物群」の意味・わかりやすい解説

成羽植物群 (なりわしょくぶつぐん)

岡山県高梁市の旧成羽町を中心に分布する上部三畳系成羽層群(約2億3000万年前)と呼ばれる地層中に含まれている化石植物総称。その研究は古く,1905年横山又次郎によって行われ,その後,大石三郎,藤岡一男らの研究によってその全容が明らかにされた。その組成は,トクサ類6種,シダ類30種,シダ種子類4種,ソテツ類25種,イチョウ類9種,チェカノフスキア類4種,球果類10種,その他2種からなり,ほぼ同時代の山口県大嶺植物群とともに,東アジアの三畳紀後期を代表する化石植物群である。この植物群の大きな特徴は,大嶺植物群と同じく,多種多様のヤブレガサウラボシ科に属するシダが豊富なことで,またイチョウ,チェカノフスキア,針葉の球果類をあわせ含むことから,当時の亜熱帯域と温帯域とのほぼ中間域に繁茂した植物群であると考えられる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「成羽植物群」の意味・わかりやすい解説

成羽植物群
なりわしょくぶつぐん

岡山県高梁市成羽町付近の中生代三畳紀の成羽層に産する植物化石群。成羽層中部の頁岩に含まれ,80種以上の化石種が知られる。シダ植物,イチョウ,ソテツ類 (ニルソニア) ,針葉樹類 (ポドザミテス ) などが多い。成羽植物化石群を産する成羽層の上部は海成層で,モノチスなどを多産することにより地質時代が決定され,この下位の成羽植物群の地質時代はノリアン期とされている。以前はグリーンランドのレーチック植物群に比較された。

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