人々が一定期間に購入(需要)したいと望む財の数量(X)は,その財の価格や他財の価格だけでなく,人々の所得(M)のレベルにも依存している。この所得の水準の変化割合(⊿M/M)と,それに依存しておこる需要量の変化割合(⊿X/X)の相対的大きさを記述するのが,所得弾力性(η)という概念である。数式として表現すればとなる。
いまある家計を考えて,購入しようとしている財の相対価格がまったく変化しないで,その家計の所得のみが変化したとする。この場合,家計の支出の総変化は(貯蓄をしないと仮定すれば)所得の変化量に等しいはずである。すなわち,各財に対する所得弾力性の加重平均は,合計すると必ず1となり,この加重平均のウェイトは各財への所得の支出割合となっている。この関係は一般に〈クールノーの恒等式〉とも呼ばれるものである。
所得弾力性ということばは,一般には財の〈需要の所得弾力性〉を指す場合が多いが,ときには各産業の生産物の需要に対する所得弾力性という意味で使われたり,あるいは貨幣需要の所得弾力性というように広く使われることがある。たとえば前者の例として,エネルギー需要量は経済成長と密接な関係をもっているため,エネルギー消費量のGNP弾性値を基準としてエネルギー政策をたてる場合などがこれにあたる。需要の所得弾力性は,財により,産業により異なり,一般には所得弾力性の高い商品の生産および輸出に特化したほうが,経済成長や輸出成長の観点からは有利であると考えられる。
→弾力性
執筆者:猪木 武徳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(上村協子 東京家政学院大学教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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