同一地域内の金融機関が相互に支払を求める手形や小切手類を持ち寄り,労力,時間等を省くためにその差額だけを決済することを手形交換といい,各金融機関が毎日集まって手形交換を行う場所を手形交換所という。また手形交換のために金融機関が集まってつくっている団体自体をも手形交換所という。外国では1773年ロンドンに初めて開設され,日本では1879年に大阪手形交換所が,87年には東京手形交換所が設けられた。交換所には法務大臣の指定する交換所と未指定(私設)の交換所があり,その数は全国で700ヵ所を超える。手形交換所は加盟方式になっており,加盟金融機関は直接手形交換所に出席し,みずからの手で手形交換を行う。これに対し非加盟金融機関は,加盟金融機関を受託銀行として手形交換事務を委託し交換決済を行ったのち受託銀行との間において個別に決済をするが,これを代理交換という。
手形交換所は,経済的機能として,労力・時間の節約と危険防止に役立つほか,法律的機能として,手形交換所への手形・小切手の持出しに,支払の呈示と同一の法的効力を認めている。手形交換所には手形交換所規則があり,手形交換に参加する金融機関の範囲,資格,手形交換の範囲,交換手続,交換差額の決済方法が定められている。また支払人の資金不足等で手形や小切手が返還されると,当該支払人を銀行取引停止処分にするという罰則規定もあり,交換所は手形や小切手の信用保持という社会的役割も担っている。この交換所規則の適用は参加金融機関に限定され,いわば自治法規である。しかし,この交換所規則は,それを前提とした当座勘定規定を承認したうえで銀行取引をしている取引先に対しても間接的に適用される。
執筆者:三木 周一
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決済システムが小切手・手形の紙片に多くを依存する時代において、決済を地域的に集中することで効率化を期待した施設。日本では、各地の銀行協会が設置・運営している。世界で一番古い手形交換所は、1773年にロンドンに設けられ、日本でも早く1879年(明治12)に設けられた。
今日では、通信技術や情報処理に使用されるコンピュータ技術が飛躍的に向上し、決済手段は紙から電子へと発展し、地域への決済集中から全国ネットへ集中されることにより、手形交換所の役割は低下している。そのため、個々の手形交換所よりも全体としての決済システムをみることがたいせつである。現在、日本の決済システムは、日本銀行による日銀システムと民間決済システムに大別される。後者は従来、地域を主体とする手形交換システム、全銀システムとよばれる内国為替(かわせ)交換システム、外国為替交換システムの三つのシステムから構成されていたが、1998年(平成10)外為法改正により外国為替の円決済は日銀システムに組み込まれている。
手形交換所の手形・小切手の交換は、午前と午後の特定の時間に仕向け銀行ごとに集計され、交換される。銀行ごとに交換尻が計算され、その決済は、支払行(交換負け)から受取行(交換勝ち)へ日銀の金融機関預金の振替えで決済される仕組みで行われる。
[石野 典]
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手形・小切手などの支払手段を相互に交換・決済する機関。おおむね限られた地域内の銀行が共同して組織する。日本では1879年(明治12)の大阪手形交換所の設立をはじめとし,87年には東京手形交換所が開設された。明治期には数カ所にとどまったが,第1次大戦後全国各地に開設された。手形交換所の運営は銀行集会所があたり,規律を乱した場合には交換参加の除名など,信用秩序の維持・発展の中心として現在に至る。
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