抗リウマチ剤(読み)コウリウマチザイ

病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版 「抗リウマチ剤」の解説

抗リウマチ剤

製品名
《アクタリット製剤》
アクタリット(沢井製薬、武田テバファーマ、武田薬品工業、東亜薬品、辰巳化学、日本ジェネリック)
オークル(日本新薬)
モーバー(田辺三菱製薬)
《イグラチモド製剤》
ケアラム(エーザイ
コルベット(富山化学工業、エーザイ)
《オーラノフィン製剤》
オーラノフィン(沢井製薬)
《サラゾスルファピリジン製剤》
アザルフィジンEN(あゆみ製薬、ファイザー
サラゾスルファピリジン(武田テバファーマ、武田薬品工業、日医工、日医工ファーマ、大興製薬、日本ジェネリック、シオノケミカル、長生堂製薬)
《ブシラミン製剤》
ブシラミン(科研製薬、小林化工、東和薬品、日医工、ファイザー)
リマチル(あゆみ製薬)
《プレドニゾロンファルネシル酸エステル製剤》
 『皮膚科用剤』
《ペニシラミン製剤》
メタルカプターゼ(大正ファーマ、大正製薬)
《メトトレキサート製剤》
メトトレキサート(田辺三菱製薬、ファイザー、沢井製薬、サンド、東和薬品、シオノケミカル、武田テバファーマ、武田薬品工業、日本ジェネリック、ダイト、日医工、大興製薬、江州製薬)
メトレート(あゆみ製薬)
リウマトレックス(ファイザー)
《レフルノミド製剤》
アラバ(サノフィ)
《ロベンザリット二ナトリウム製剤》
カルフェニール(中外製薬)

 関節リウマチの治療に用いる薬です。関節リウマチなどで炎症がおこると、変性した蛋白質たんぱくしつ(変性蛋白)が生じて炎症を悪化させます。また、リウマチ性疾患ではライソゾームという炎症を発生させる酵素ができてきます。


 抗リウマチ剤は、変性蛋白が生じるのを抑えたり、ライソゾームの発生を抑えて炎症を鎮めるはたらきがあります。


 リウマチ性疾患が治ったのと同じ状態(緩解かんかい)にすることも可能なので、原因療法に近い効果をもつ薬といえます。


 ただし、成分が炎症をおこしている関節などに少しずつ蓄積されてから効果が出る薬なので、効果が現れるまでに日数がかかります。あせらないで、根気よく使用することが大切です。


 また、非ステロイド抗炎症剤に比べると腎臓障害などの重い副作用がおこりやすいので、医師の注意をよく聞いておき、指示通り正しく使うことが大切です。


 オーラノフィン製剤は、金を主成分とする金製剤の内服剤で、注射剤よりも多少効力は劣りますが、副作用が少ない薬です。とくに、関節リウマチの発病早期の活動性(強い痛みが続く)の場合に効果があり、注射(尖端)恐怖症の人、仕事の都合などで注射ができない人に適しています。通常、非ステロイド抗炎症剤を使用しても効果がないときに使われます。


 サラゾスルファピリジン製剤は、サルファ剤の一種で、免疫機構を調整することによってリウマチの炎症を抑えます。病期や病状にかかわらず幅広く用いられ、服用して1~2か月と、効果が比較的早く現れます。


 ペニシラミン製剤は、αアルファアミノ酸の一種で、蛋白質変性抑制作用などがあるため、リウマチの緩解導入剤として用いられます。金製剤と同じくらい効果がありますが、金製剤と比べて副作用が強い薬です。通常は、非ステロイド抗炎症剤を使用しても効果がないときに使われます。服用し始めてから効果が現れるまで2~3週間かかります。この薬を使用するとビタミンB6が破壊されるので、ビタミンB6剤を同時に服用することもあります。関節リウマチの治療のほかに、重金属中毒の治療にも使われます。


 ロベンザリット二ナトリウム製剤は、免疫のはたらきを調節して、病気が進行するのを防止する効果があります。金製剤やペニシラミン製剤に比べて炎症を抑える効力は劣りますが、重い副作用がないので、長期間使用できる点が特長です。発病した早期から使用すると効果が高く、服用後12週くらい経ってから炎症がやわらいできます。


 ブシラミン製剤は、免疫の異常を改善する効果がある薬で、関節リウマチの治療に長期間服用できます。金製剤(オーラノフィン製剤)やペニシラミン製剤と同じくらい効果があり、重い副作用がほとんどみられません。


 メトトレキサート製剤は、抗体産生及びリンパ球の増殖、炎症部位への好中球の遊走を抑制したり、関節の滑膜かつまく組織や軟骨組織の破壊に関与するコラゲナーゼの産生を抑制するといった作用があり、関節リウマチ及び関節症状を伴う若年性特発性関節炎の治療に用いられます。ただし、この薬は、過去の治療で非ステロイド抗炎症剤及びほかの抗リウマチ剤では十分な効果が得られない場合に限って使われるものです。


 レフルノミド製剤は、免疫異常の調整作用で効果が速く現れる薬です。


 段階的治療といって、効果がなければ順次薬を替えていくのがリウマチ治療の原則です。


 まず最初に、サリチル酸系の解熱鎮痛剤を用います。これで効果がなければ、強力な抗リウマチ作用をもつ非ステロイド抗炎症剤を数か月使います。


 解熱鎮痛剤を併用したり、炎症をおこしている関節の中に副腎皮質ふくじんひしつホルモン剤を注入する治療が行われることがあります。


 それでも効果がなければ、金製剤、ペニシラミン製剤、副腎皮質ホルモン剤のいずれかを用います。また、早めに金製剤やペニシラミン製剤を使用し始めることもあります。ただし、こうした判断は医師がするものですから、指示に従ってください。


①長期間にわたって使用しなければならないことが多い薬です。副作用を予防するには、指示通りに正しく使用する必要があります。


発疹ほっしん、かゆみ、潰瘍かいよう、血液障害、貧血、腎臓や肝臓の障害などが現れたときは服用を中止して、必ず医師に報告する必要があります。ただ自分では気がつきにくい副作用もあるので、医師から指示された診察・検査は必ず受けてください。


アクタリット製剤を使用している人は、間質性肺炎、消化性潰瘍かいよう出血性大腸炎ネフローゼ症候群、再生不良性貧血などの血液障害、肝機能障害がおこることがあります。このような場合は使用を中止してただちに医師に報告してください。


 イグラチモド製剤を使用している人では、肝機能障害、黄疸おうだん汎血球減少症無顆粒球症白血球減少、消化性潰瘍、間質性肺炎、感染症をおこすことがあります。このような場合は使用を中止してただちに医師に報告してください。


 オーラノフィン製剤を使用している人におこる副作用は、発疹、かゆみ、下痢などです。また、間質性肺炎、再生不良性貧血などの血液障害、急性腎障害、ネフローゼ症候群などがおこることがあります。このような場合は使用を中止してただちに医師に報告してください。


 サラゾスルファピリジン製剤を使用している人では、再生不良性貧血、伝染性単核球症様症状(発熱、発疹、かぜ様症状、リンパ節のれ、肝機能異常など)などの血液障害、中毒性表皮壊死えし融解症、皮膚粘膜眼症候群、間質性肺炎、急性腎障害、ネフローゼ症候群、消化性潰瘍、無菌性骨髄炎、脳症、心膜炎・胸膜炎、全身性エリテマトーデス様症状(発熱、倦怠感けんたいかんなど)、劇症肝炎、肝炎、黄疸、ショック・アナフィラキシーなどがおこることがあります。このような場合は使用を中止してただちに医師に報告してください。また、皮膚や爪、尿や汗などの体液が黄色~黄赤色に着色されることがあります。


 ブシラミン製剤を使用している人は、再生不良性貧血などの血液障害、過敏性血管炎、間質性肺炎などの肺障害、急性腎障害、ネフローゼ症候群、肝機能障害や黄疸、中毒性表皮壊死えし融解症、皮膚粘膜眼症候群、天疱瘡様症状、紅皮症型薬疹、筋力低下、重症筋無力症、多発性筋炎、ショック、アナフィラキシーがおこることがあります。このような場合は使用を中止してただちに医師に報告してください。


 また、吐き気・嘔吐・下痢・便秘などの消化器症状、頭痛・ねむけ・味覚障害、乳房肥大、女性化乳房、脱毛、しびれ、倦怠感、むくみなどがおこることがあります。


 ペニシラミン製剤を使用すると、重い血液障害(白血球減少など)がおこることがあります。また、肺胞炎や間質性肺炎などの肺障害、グッドパスチュア症候群(血痰けったん喀血かっけつなど)、味覚脱失、視神経炎、多発性神経炎、全身性エリテマトーデス様症状、多発性筋炎、血栓性静脈炎、多発性血管炎、胆汁うっ滞性肝炎、筋不全麻痺、アレルギー性血管炎などがおこることがあります。このような場合は使用を中止してただちに医師に報告してください。


 メトトレキサート製剤を使用している人では、中毒性表皮壊死えし融解症や皮膚粘膜眼症候群などの重い皮膚障害、出血性腸炎、ショック、冷感・呼吸困難・血圧低下などのアナフィラキシー、骨髄抑制、間質性肺炎、劇症肝炎、肝不全、脳症(白質脳症を含む)、急性腎障害、感染症、結核、骨粗鬆症などがおこることがあります。このような場合は使用を中止してただちに医師に報告してください。


 また発熱、せき、呼吸困難、口内炎、倦怠感けんたいかんなどの症状が認められた場合は、すぐ医師に相談してください。


 ロベンザリット二ナトリウム製剤を使用している人では、急性腎障害や間質性腎炎などの重い腎障害がおこることがあります。このような場合は使用を中止してただちに医師に報告してください。また、食欲不振、胃不快感、吐き気・嘔吐、のどの渇き、口内炎などがおこることがあります。このような場合は使用を中止してただちに医師に報告してください。


 レフルノミド製剤では、汎血球減少症、アナフィラキシー、皮膚粘膜眼症候群、中毒性皮膚壊死融解症、感染症、結核、間質性肺炎、膵炎、肝不全、黄疸などがおこることがあります。このような場合は使用を中止してただちに医師に報告してください。また、下痢、吐き気、肝機能異常、頭痛、脱毛などがおこることがあります。


 以上のような症状がおこったときには、必ず医師に相談してください。


①錠剤・カプセル剤がありますが、食後の服用が原則です。かってな判断で中止したり、減量・増量せず、医師の指示通りに正しく服用してください。


 関節リウマチは、朝起きたときに手がこわばったり、関節が痛んだりすることが多いものです。夜の就寝前に薬を服用すると、翌朝の症状を抑えるのに効果的です。詳しくは医師に聞いてください。


②リウマチ性疾患は原因がまだはっきりわかっていないので、根本的に治すことはできません。緩解かんかい(病状が治まっている状態)を続けるためには、抗リウマチ剤を根気よく使用する一方で、生活上の注意(安静・運動・食事など)を守り、病状を悪化させる寒冷・過労を避けることが大切です。


③かかっている病気、使っている薬などを、あらかじめ医師に報告してください。


④妊婦あるいは現在妊娠している可能性のある人、母乳で授乳中の人は、原則として使用できません。また、小児や高齢者では、使用できないことがあります。


⑤重い血液障害、腎臓・肝臓の障害、重い胃腸障害、気管支喘息ぜんそく、ウイルソン病、鉛・水銀・銅の中毒の人、全身性エリテマトーデス、じんましんなどの慢性の皮膚病などの病気がある人や全身状態の悪い人は使用できないことがあるので、必ず医師に報告してください。


 イグラチモド製剤では、この薬の成分に対して過敏症の既往歴のある人、重篤な肝障害、消化性潰瘍のある人には使用できません。また、母乳で授乳中の人、肝障害またはその既往歴のある人、消化性潰瘍の既往歴のある人、低体重の人、貧血、白血球減少症、血小板減少症、骨髄機能低下、腎障害のある人には使用できないことがあります。


 オーラノフィン製剤では、腎障害、肝障害、血液障害、重い下痢、金製剤で重い副作用を起こしたことのある人、小児には、使用できません。


 サラゾスルファピリジン製剤では、サルファ剤やサリチル酸製剤で過敏症状をおこしたことのある人、新生児や低出生体重児には使用できません。


 ブシラミン製剤では、血液障害、腎障害、この薬の成分に対して過敏症の既往歴のある人には使用できません。


 ペニシラミン製剤では、血液障害、腎障害、全身性エリテマトーデス、成長期の小児で結合組織の代謝異常がある人、オーラノフィンなどの金剤を使用している人には使用できません。


 メトトレキサート製剤は、骨髄抑制(血液障害)、慢性肝疾患、腎疾患、胸水きょうすい腹水ふくすい、活動性結核のある人、母乳で授乳中の人、この薬の成分に対して過敏症の既往歴のある人は使用できません。これまでに肺線維症にかかったことのある人、感染症、水痘すいとう、非ステロイド抗炎症剤を使用中の人、アルコール常飲者などは、使用するときに注意が必要です。


 レフルノミド製剤では、慢性肝疾患、活動性結核のある人には使用できません。また、間質性肺炎、肺線維症などの肺障害、日和見感染による肺炎のある人、またはそれらにかかったことのある人は、注意して用いてください。


 ロベンザリット二ナトリウム製剤では、間質性腎炎や腎性尿崩症などの重い腎障害のある人には使用できません。


⑥過去にペニシリン製剤、サルファ剤、サリチル酸製剤を使って過敏症状(発疹、発熱、かゆみなど)をおこしたことがある人、慢性の皮膚病のある人は、あらかじめ医師に報告してください。使用する場合は、医師の指示をより厳重に守ってください。


⑦現在使用している薬があるときは、あらかじめ医師に報告し、ほかの薬を使用するときも前もって必ず医師に相談してください。


 とくに、免疫抑制剤、抗凝血剤〔ワルファリンカリウム製剤〕、スルホニル尿素系血糖降下剤葉酸製剤ジゴキシン製剤などの薬を同時に使用すると(併用)、副作用が増強したり、効果が減少することがあります。また、イグラチモド製剤とワルファリンカリウム製剤、金製剤とペニシラミン製剤を併用してはいけません。

抗リウマチ剤

抗リウマチ剤とは


 関節・筋肉などの運動器に炎症、痛み、こわばりのおこる、原因が特定できない病気をリウマチ性疾患と総称しています。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、リウマチ熱などがその代表です。


 私たちの体は、生まれつきもっていない物質や病原微生物が体内に入ってくると、その異物に対応する抗体という物質をつくり、抗体と異物を結合させて異物の毒性を封じるはたらきをすることで、健康を維持しています。


 このはたらきを免疫といいますが、生まれつき体内にもっている物質(自己)に対しては、抗体をつくらないのが原則です。


 ところが、誤って生まれつき体内にもっている物質に対する抗体が生じ、その結果、抗体と自己のあいだで反応がおこり、病気を発生させてしまうことがあります。この現象が自己免疫で、その結果おこった病気を自己免疫疾患といいます。


 リウマチ性疾患は自己免疫が大きな原因と考えられていますが、ホルモンやウイルスなどのかかわりも考えられます。


 リウマチ性疾患の治療に用いるのが抗リウマチ剤で、この項でとり上げた薬以外に解熱鎮痛剤非ステロイド抗炎症剤なども、抗リウマチ剤として用いられています。


 非ステロイド抗炎症剤は、炎症をおこす原因物質であるプロスタグランジン、トロンボキサンなどが作用するのを抑えて、リウマチ性の炎症を抑えます(抗リウマチ作用)。また、炎症に伴う痛み、発熱などを解消する効果(鎮痛・解熱作用)もあります。


 ただし、作用が緩和で、確実に効くとは限らず、薬によって作用のしかたが異なるものもあり、人によって効果に差がみられます。医師とよく相談して、自分に合った薬を選んでもらうことが大切です。


 解熱鎮痛剤のサリチル酸系製剤のアスピリン製剤も、抗リウマチ作用をもっています。また、ピラゾロン系の非ステロイド抗炎症剤のなかに強力な抗リウマチ作用をもつものがありますが、血液障害(再生不良性貧血、顆粒球かりゅうきゅう減少症など)などの強い副作用がみられるので、長期間にわたって使用することはできません。


抗リウマチ剤


JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤


TNFα阻害剤


インターロイキン-6阻害剤


T細胞選択的共刺激調節剤

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「抗リウマチ剤」の意味・わかりやすい解説

抗リウマチ剤
こうリウマチざい
anti rheumatic drug

リウマチ性疾患,特に慢性関節リウマチの治療薬剤のなかで,金剤,Dペニシラミン製剤など,消炎作用を持たず,主に患者の免疫異常を是正する薬を指す。注射剤であること,副作用が一定頻度であることなど,使いにくい薬剤だったが,経口金剤,ロベンザリット,ブシラミンなど,経口可能で副作用の発症頻度も低い薬剤が登場,第一線の臨床現場にも浸透し始めている。最近,これまで考えられていたよりも病状の進展が速い症例の存在が注目されており,このような場合は早期から抗リウマチ剤を使わなければならないといわれ始めている。

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