改訂新版 世界大百科事典 「持続睡眠療法」の意味・わかりやすい解説
持続睡眠療法 (じぞくすいみんりょうほう)
continuous sleep treatment
鎮静・催眠性の薬物を投与して持続的な傾眠ないし睡眠状態にすることによって精神障害を治療する方法。ウォルフO.Wolff(1901)がトリオナールを用いたことに始まるが,さらにクレージJ.Kläsi(1921)がソムニフェンを使用して早発性認知症や錯乱状態の患者を治療したことで精神病に対する一つの治療手段となった。日本でも下田光造(1922)によって躁うつ病患者の治療にスルホナールが用いられ,これが盛んに行われた時期がある。治療期間は10~20日前後で,主としてうつ病や躁病,統合失調症の興奮状態などがその治療対象となった。しかし,精神障害の治療に向精神薬が導入されてからは定式的なこの療法が行われることはなくなっている。
執筆者:武正 建一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報