排出権取引(読み)ハイシュツケントリヒキ(その他表記)emissions trading

デジタル大辞泉 「排出権取引」の意味・読み・例文・類語

はいしゅつけん‐とりひき【排出権取引】

排出量取引

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「排出権取引」の意味・わかりやすい解説

排出権取引
はいしゅつけんとりひき
emissions trading

国や企業汚染物質を排出する権利排出権)を、市場で売買取引すること。排出量取引、排出枠取引ともいう。汚染物質排出を物理的に削減するにはさまざまな対策が必要で、その対策コストは国・企業によって異なる。ある国・企業にとって、自ら排出削減対策を実施するより低いコストで、排出権が市場から入手できる場合には、排出権を購入する誘因が働く。逆に、排出権価格より低コストで排出削減が実施できる国・企業は対策を実施し、排出権を他に売却して利益を得ようとする誘因が働く。こうして排出権取引が実施される場合、理論的には取引参加者の双方が自ら対策を実施するより、市場メカニズムを通して全体としては低コストで排出削減が可能となる。

 具体的な例としては、アメリカにおける1990年改正の大気浄化法のもとでの硫黄(いおう)酸化物(SO2)排出権取引の実施(1993年開始)等がある。また、地球温暖化防止策の一つとして、二酸化炭素(CO2)排出権取引が注目されている。ヨーロッパ連合EU)ではEU-ETSとよばれるCO2排出権取引制度が2005年に開始され、気候変動対策強化のなかで2018年以降取引価格が大きく上昇するなど、注目を集めている。中国でも2021年から全国レベルでのCO2排出権取引を開始した。日本でも、カーボンプライシングのあり方として、炭素税とともに排出権取引への取組みに大きな関心が寄せられるようになっている。ただし、排出権取引については、制度そのものが複雑になる可能性があること、排出権(CO2)価格が乱高下することで経済やエネルギー市場に影響を及ぼす可能性があること、などの課題もある。

[小山 堅 2022年1月21日]

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知恵蔵 「排出権取引」の解説

排出権取引

排出量取引」のページをご覧ください。

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百科事典マイペディア 「排出権取引」の意味・わかりやすい解説

排出権取引【はいしゅつけんとりひき】

二酸化炭素など地球温暖化の原因とされる環境汚染物質の排出量低減を目的とした経済的手法。あらかじめ国や自治体,企業などの排出主体間で排出量を権利として決めて割り振り,その権利を売買することで,全体の排出量をコントロールするしくみ。1997年の地球温暖化防止会議で採択された京都議定書には,各国の削減目標値が決められているが,目標達成が困難な国もあることから,それを補完する措置として市場原理を活用した温室効果ガスの排出権取引制度が議定書に盛り込まれた(京都メカニズム)。この制度では,削減目標値を超えて削減できた場合に,その削減分を対価に他国へ売却することができ,逆に目標値に達しない場合は,不足分を対価として他国から購入できる。イギリスでは2002年4月に世界で初めて温室効果ガス排出量の国内取引市場を設置,各国内で排出量取引の取り組みが始まっている。EU域内では2005年1月から,ニュージーランドは2008年から国内排出量取引制度を導入している。日本では2005年度から自主参加型の排出量取引制度に取り組んでいるが,本格的な運用には至っていない。2009年9月,鳩山由紀夫首相は国連で演説し,2020年までに温室効果ガスを1990年比25%削減という,いわゆる鳩山イニシアチブを提言したが,その実現のためにも日本も排出権取引を本格化させる必要が指摘されている。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「排出権取引」の解説

排出権取引

地球温暖化の原因とされる二酸化炭素などを排出する権利を売買する仕組み。1997年の地球温暖化防止京都会議では参加各国の二酸化炭素排出量の削減目標を取り決めた。同時に排出削減目標を達成できない場合を想定し、二酸化炭素排出権の国際取引きも可能になった。排出削減目標を達成できない国や企業は、削減目標を達成した国や企業から排出権を買い取ることで、目標数値を穴埋めできる。

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