接見交通(読み)せっけんこうつう

改訂新版 世界大百科事典 「接見交通」の意味・わかりやすい解説

接見交通 (せっけんこうつう)

刑事手続により身柄の拘束を受けている者と外部の者とが面会すること。面会だけでなく書類・物の授受を含めて接見交通という場合も多い。

 逮捕,勾引,勾留等,事由いかんを問わず身体の拘束を受けている被告人被疑者は,弁護人(弁護人になろうとする者を含む)と立会人なしで接見交通をすることができる(刑事訴訟法39条1項)。立会人がない点を指して秘密交通権とも呼ばれ,防御上最も重要な基本的権利の一つである。もっとも,刑事訴訟法は,同時に,起訴前段階では,被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限しないかぎり,捜査機関は,捜査のため必要があるときは,接見の日時,場所および時間を指定できると定める(同条3項)。この接見指定は,〈面会切符制〉と呼ばれる方式--検察官は指定を必要と認める事件については一般的指定書(捜査のため必要があるので,接見の日時等を別に発すべき指定書のとおり指定すると記載した書面)を被疑者および監獄の長に送付しておき,具体的指定書(具体的な日時等を指定した書面)を持参した弁護人について接見を実施させる--で行われることが多い。このような実務慣行に対しては,実際上,一般的指定で全面的に接見を禁止し,具体的指定で部分的に禁止を解除する効果をもち,原則として自由であり例外的に制限されるにとどまる接見交通権が侵害されることになるとの批判が強い。最高裁判所の判例は,捜査機関は,接見の申出があれば,原則としていつでも接見の機会を与えるべきであり,現に被疑者を取調中であるとか,実況見分,検証等に立ち会わせる必要があるなど捜査の中断による支障が顕著な場合には,弁護人と協議してできるかぎりすみやかな接見のための日時等を指定し,被疑者が防御のため弁護人と打ち合わせることのできるような措置をとるべきであるとする(最高裁1978年の判決)。

 起訴後は,余罪について捜査の必要があっても,捜査機関は,接見指定を行えない(ただし,余罪につき逮捕・勾留がなされている場合には,起訴事件について防御権の不当な制限にわたらないかぎり接見指定できる)とするのが判例である。

 勾留・勾引されている被告人・被疑者は,法令の範囲内で,弁護人以外の者との接見交通権をもつ(80条,207条1項。逮捕され留置中の被疑者については,規定がないため一般に権利を有しないと解されている)。しかし,勾留の場合には,裁判所(官)は,逃亡しまたは罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは,接見の禁止,授受すべき書類その他の物の検閲,授受の禁止,差押えをすることができる(81条。ただし勾引の場合はこのような処分はできない)。もっとも,糧食の授受の禁止や差押えは許されない(同条但書)。

 受刑者については,監獄法は原則として親族のみとの面会を認め(45条),監獄法施行規則はその時間(30分以内),時限(執務時間内),度数などの制限条件を定めている(120条以下。ほかに行刑累進処遇令63,64条)。しかし,近時,面会等が処遇上重要な役割を果たすことが自覚され,運用面のくふうだけでなく,立法的な改善の手立ての必要性が指摘されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「接見交通」の意味・わかりやすい解説

接見交通
せっけんこうつう

拘禁中の被告人,被疑者が弁護人や家族と面会,書類もしくは物の授受を行うことをいう (刑事訴訟法 39,80~81) 。勾留されている被告人の場合には,原則として弁護人と自由無制限に接見交通する権利を有するほか,それ以外の者とも法令の範囲内で接見交通することができる。これに対し,被疑者の場合には,その相手は弁護人に限られるうえ,捜査の必要があるとき捜査機関はその日時,場所,時間を指定することができるようになっている (39条3項) 。この指定制度はもちろん,例外的に認められたものであるが,実際にはその運用により,被疑者の接見交通権が十分に行使できなくなることも多く,強い批判の対象とされている。

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