(読み)サン

デジタル大辞泉 「散」の意味・読み・例文・類語

さん【散】[漢字項目]

[音]サン(呉)(漢) [訓]ちる ちらす ちらかす ちらかる
学習漢字]4年
四方にちらばる。ばらばらになる。ちらす。「散会散華さんげ散在散乱雲散解散四散集散退散発散分散離散
財物をばらまくように使う。「散財
とりとめがない。しまりがない。「散漫
気ままである。ぶらぶらしている。ひま。「散人散歩閑散
粉末状の薬。「散薬胃散
(「」の代用字)まく。「散水散布
難読散切ざんぎり

ばら【散】

もともと、ひとまとまりとして扱われていた物が、一つ一つ別になった状態。また、そのもの。「で売る」「にする」
散銭ばらせん」の略。

さん【散】

粉末の薬。こなぐすり。「実母」「敗毒

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精選版 日本国語大辞典 「散」の意味・読み・例文・類語

ちらし【散】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「ちらす(散)」の連用形の名詞化 )
  2. 散らすこと。また、細かく切って散らしかけるもの。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  3. 広告するために、人に配る刷り物。引きふだ。
    1. [初出の実例]「加賀の小松に名を触す也〈潘川〉 慰におとりの散(ちらシ)こしらへて〈野径〉」(出典俳諧・白馬(1702)下)
    2. 「散らし配りて薬売」(出典:浄瑠璃・本朝二十四孝(1766)四)
  4. 特に、課題・締切・撰者の名などを書いて発句を募集する引きふだ。
    1. [初出の実例]「俳諧の題をしるしたる、月並の法条(チラシ)そのほか番附など張てあり」(出典:人情本・春色梅美婦禰(1841‐42頃)四)
  5. 和歌の衆議判のとき、一人に一冊ずつ配る歌の冊子。
  6. カルタ取りで、ふだをまきちらして、読むに従って争いとるやり方。また、そのときのカルタのふだ。
    1. [初出の実例]「『さあ、奥へ行って、今とりかけの』『ちらしを取って』『遊ばうわいな』」(出典:歌舞伎・三題噺高座新作(髪結藤次)(1863)三幕)
  7. ちらしもよう(散模様)」「ちらしもん(散紋)」などの略。
    1. [初出の実例]「無地の衣裳なりしもちらしをつけ、鹿子をまじへ」(出典:評判記・色道大鏡(1678)一四)
  8. (い)った麦や米の粉、みかんの皮、山椒などの細末を湯に浮かべた飲物。香煎湯。
    1. [初出の実例]「あがり湯のくれやう、ちらしをのませ、浴衣の取さばき」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)一)
  9. 煎じたての香りのいい茶。散茶。
    1. [初出の実例]「散茶とは今いふ煮ばなにて好茶なり、ちらしともいへり」(出典:随筆・嬉遊笑覧(1830)九上)
  10. ちらしずし(散鮨)
    1. [初出の実例]「散し、ごもく鮓ともに有之。起し鮓とも云」(出典:随筆・守貞漫稿(1837‐53)二八)
  11. ( 「くいちらし(食散)」の略 ) 方々の異性に手を出すこと。また、その人。あちこちのみせに行って一か所になじまないもの。江戸深川の遊里の語。ちらし食い。
    1. [初出の実例]「おゑねへちらしなお客だよ」(出典:洒落本・玉之帳(1789‐1801頃)一)
  12. あちこちに散らばっているもの。
    1. [初出の実例]「五十円ありゃア沢山だ。我輩なんぞは、纏ったのは僅に三十位だ。最も散(チラ)しが二十位はある」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉六)
  13. 使用人などに、分量を限らないで食わせる飯。
    1. [初出の実例]「チチチちらしだとヨヨヨよけれど、ブブぶんぬきにゃアこまるなア」(出典:洒落本・卯地臭意(1783))
  14. 風呂から上がるときに、からだにかけて清める湯。かかり湯。
    1. [初出の実例]「かかり湯のことを散しと云し也」(出典:随筆・守貞漫稿(1837‐53)二二)
  15. 地唄・箏曲の楽曲の構成単位。手事という長い合の手(間奏)の終わりにあって、手事の気分を散らし、気分転換をして、次の歌に入る過渡的な役割を持つ。速度が速く、安定感がないのが特徴。
  16. 歌舞伎舞踊曲の構成単位。曲の終わりの方にあって、速度は速く、盛り上がりの感じられる律動的な部分。
    1. [初出の実例]「チラシ 我ふりすてて一声ばかり、いづくへゆくぞ山ほととぎす」(出典:歌謡・松の葉(1703)二)
  17. ちらしがき(散書)」の略。
  18. ちらしがみ(散髪)」の略。
    1. [初出の実例]「洗ったと見えてちらしに下げて居た髪を振り振り寿代さんは」(出典:黒い眼と茶色の目(1914)〈徳富蘆花〉三)

ちり【散】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「ちる(散)」の連用形の名詞化 )
  2. 散ること。また、散らしたもの。
    1. [初出の実例]「このゆふへ降りくる雨は彦星の早漕ぐ船の櫂(かい)の散(ちり)かも」(出典:万葉集(8C後)一〇・二〇五二)
  3. 建築で、二つの材の面が不揃いになる時、その出っ張ったり、または、引っこんだりした部分。
    1. [初出の実例]「又方立と鴨居・敷居のちりは、かな物に少ちりを見るへし」(出典:匠明(1608‐10)殿屋集)
  4. 本の表紙で中身より出っ張った部分。
    1. [初出の実例]「表紙の付やうは板紙(ぼーる)を本の寸法より三方へ凡一分位のチリを付て切(きり)クロースをくるむなり」(出典:風俗画報‐一〇八号(1896)人事門)

さん【散】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. こなぐすり。また、接尾語的に用いて、こなぐすりの名に添える。「敗毒散
      1. [初出の実例]「三蔵送散十六ケ。分人々了」(出典:参天台五台山記(1072‐73)六)
    2. 去ること。逃げること。また、花が散ること。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  2. [ 2 ] 〘 接頭語 〙 位階を示す名詞の上に付いて、位があって、官職のないことを示す語。「散一位」など。

ばら【散】

  1. 〘 名詞 〙
  2. まとまっていないこと。ばらばらであること。また、そのもの。
    1. [初出の実例]「二三枚原書の散乱(バラ)になったのを貸たまへ」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一二)
  3. ばらせん(散銭)」の略。
    1. [初出の実例]「もらいやうもしっているがそれもばらだ」(出典:洒落本・契情買虎之巻(1778)五)

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普及版 字通 「散」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 12画

[字音] サン
[字訓] ちる・はなれる

[説文解字]
[金文]

[字形] 会意
+攴(ぼく)。は筋肉の形。上部は筋腱を示し、下は肉。これを撃って柔らげることをいう。〔説文〕四下に「雜なり」とし、(さん)声の字とするが、は麻茎などを撃って、その繊維をほぐすことをいう。その撃つ対象は異なるが、撃ちほぐす意は同じ。散肉は美味・正味のものではないから、すべて無用・無価値なものを散という。

[訓義]
1. ちる、ちらす、たたいてほぐす、ばら肉。
2. はなれる、きれる、ばらばらとなる、みだれる、ちりしく。
3. わかつ、わかれる、にげる。
4. ほしいまま、ゆるやか。
5. ひま、いやしい、役立たず。
6. 酒爵の名。

[古辞書の訓]
名義抄〕散 アカツ・アタリ・カゾフ・ハナツ・ホドコス・トク・トラク・ヤム・アキラカナリ・シク・チル・チラス・クハル/散歸 アラケカヘル 〔字鏡集〕散 ホドコス・チラス・アラケ・アキラカナリ・トク・ヤム・シク・カヘル・ハナツ・アラス・ニグ・アラク・チル・アカツ・クワル・ハナル・カゾフ

[語系]
散・san、撒・satは声義近く、散はばら肉、は麻皮をほぐす、はくず米、撒はまき散らす意。みな一系の語である。

[熟語]
散衣・散意・散位・散軼・散佚・散逸・散員・散鬱・散越・散塩・散火・散華・散衙・散開・散懐・散楽・散花・散濶・散官・散渙・散緩・散棄・散機・散客・散給・散去・散曲・散金・散禁・散空・散欠・散見・散斉・散斎・散灑・散財・散在・散材・散策・散士・散子・散志・散使・散施・散賜・散事・散失・散質・散舎・散儒・散収・散聚・散従・散処・散絮・散舒・散冗・散場・散職・散振・散賑・散人・散尽・散水・散声・散銭・散遷・散贍・散走・散想・散草・散卒・散尊・散帯・散退・散淡・散誕・散置・散秩・散茶・散籌・散朝・散適・散・散点・散篆・散伝・散灯・散播・散馬・散配・散敗・散髪・散発・散飯・散布・散文・散兵・散歩・散亡・散木・散朴・散没・散漫・散慢・散目・散悶・散薬・散陽・散落・散乱・散懶・散吏・散離・散掠・散略・散慮・散僚・散隷・散朗・散録・散話
[下接語]
意散・一散・逸散・散・散・雨散・胡散・雲散・霞散・乖散・解散・潰散・散・拡散・閑散・簡散・揮散・玉散・行散・香散・耗散・散・四散・徙散・集散・聚散・消散・散・冗散・蒸散・心散・星散・疎散・粟散・退散・樗散・投散・逃散・破散・発散・散・披散・飛散・罷散・靡散・飄散・布散・風散・分散・放散・奔散・霧散・目散・幽散・離散・流散・櫟散

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

栄養・生化学辞典 「散」の解説

 散剤ともいう.粉状の薬剤

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【ちらし】より

…日本の芸能・音楽の用語。〈チラシ〉〈散〉とも書かれる。楽曲の構成上,終結部ないし付加的な部分についていわれるもので,〈気分を散らす〉という言葉から出たものともいわれる。…

※「散」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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