文化科学(読み)ブンカカガク(英語表記)Kulturwissenschaft[ドイツ]

デジタル大辞泉 「文化科学」の意味・読み・例文・類語

ぶんか‐かがく〔ブンクワクワガク〕【文化科学】

《〈ドイツKulturwissenschaftリッケルト用語事物の反復しない一回的個別性を超越的な価値に基づいて選択し記述する科学対象一般性を明らかにして法則を定立する自然科学に対していう。

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精選版 日本国語大辞典 「文化科学」の意味・読み・例文・類語

ぶんか‐かがくブンクヮクヮガク【文化科学】

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Kulturwissenschaft の訳語 ) 西南ドイツ学派のリッケルトの用語。科学を方法論によって二つに分け、自然現象の一般性を抽象して法則化する自然科学に対し、自然や精神生活歴史などの一回かぎりの個性的な事象とその因果的可能性を概念的に記述する科学。歴史科学
    1. [初出の実例]「更に哲学の効用は大学に進んで文化科学、自然科学を学ぶ場合に現はれる」(出典:学生と教養(1936)〈鈴木利貞編〉実り多き頃〈上田達雄〉五)

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改訂新版 世界大百科事典 「文化科学」の意味・わかりやすい解説

文化科学 (ぶんかかがく)
Kulturwissenschaft[ドイツ]

19世紀の末以来の用語。ウィンデルバントやリッケルトは歴史ないし歴史的諸学が自然科学と異なる点に注目し,その結果,リッケルトやM.ウェーバー,さらにはカッシーラー等によって自然科学に対する諸学の総称として従来精神科学の代りに用いられるようになった。リッケルトは価値から離れた自然の法則を一般化的方法により把握する自然科学に対し,文化価値を賦与された文化形態の個性化的方法による把握を文化科学と呼ぶ。現在では人文科学社会科学との総称が文化科学である。なおオストワルト以来〈文化学Kulturologie〉という用語があるが,活力を欠き一般的ではない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「文化科学」の意味・わかりやすい解説

文化科学
ぶんかかがく
Kulturwissenschaft ドイツ語

自然科学に対して人間文化に関する諸学をさし、精神科学とほぼ同義。19世紀末からドイツ思想圏で使用されたが、とくにウィンデルバントは、法則定立的な自然科学と個性記述的な歴史科学とを区別し、さらにリッケルトはこれを受けて、自然科学が現象の一般的法則を価値に無関心に普遍化的に定立するのに対して、文化科学は事象の一回的な特殊性ないしその因果連関を超越的な文化価値に関係して個性化的に把握するとした。

[伊東祐之]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「文化科学」の意味・わかりやすい解説

文化科学
ぶんかかがく
Kulturwissenschaft

新カント派,西南学派の代表的哲学者 H.リッケルトによって,自然科学と対比して用いられた用語。概念構成にあたっての価値への関係づけがなされることと,方法における個性記述という点で特徴づけられる。現在では人文科学と社会科学に分けられており,一般にはあまり用いられない。

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世界大百科事典(旧版)内の文化科学の言及

【人間科学】より

…イギリスでは,たとえばJ.S.ミルはモラル・サイエンシズという言葉で歴史学,文献学(言語学),経済学,社会学,人類学,心理学,法学,宗教学などを含む〈人間本性に関する諸科学sciences of human nature〉を意味したが,この語はドイツ語に訳されて〈精神科学Geisteswissenschaft〉となり,やがてディルタイが客観化された精神としての〈文化〉を理解する解釈学的探求の学をこの名で呼んだ。また新カント学派のウィンデルバントやリッケルトは,〈歴史科学Geschichtswissenschaft〉〈文化科学Kulturwissenschaft〉という語で,人文諸科学を自然科学とは本質的に異なる科学として分別しようとした。ドイツ哲学の影響の強かった日本においては,〈人文科学〉という用語は,ドイツ的な〈精神科学〉〈文化科学〉に近い内容を意味している。…

※「文化科学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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