精神科学(読み)セイシンカガク(その他表記)Geisteswissenschaften ドイツ語

デジタル大辞泉 「精神科学」の意味・読み・例文・類語

せいしん‐かがく〔‐クワガク〕【精神科学】

精神に関する諸科学総称心理学倫理学言語学法学経済学歴史学社会学など。19世紀後半、ドイツに起こった学問研究ディルタイらに代表される。自然科学の説明的‐構成的方法に対し、精神科学の方法は分析的‐記述的、体験表現理解であるとされた。

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精選版 日本国語大辞典 「精神科学」の意味・読み・例文・類語

せいしん‐かがく‥クヮガク【精神科学】

  1. 〘 名詞 〙 自然科学に対して、人間の精神の働きにもとづく諸現象を対象とする学問的研究。歴史学、言語学、政治学法律学、社会学、美学、宗教学などの総称。〔普通術語辞彙(1905)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「精神科学」の意味・わかりやすい解説

精神科学
せいしんかがく
Geisteswissenschaften ドイツ語

自然科学に対して、歴史、文化、社会などの人間的事象を研究する諸科学を意味し、ドイツにおいて主として19世紀以降、古代ギリシア以来のさまざまな学問論とドイツ観念論、ないし精神哲学の伝統とが結び付くことによって、術語として形成・使用された。内容的にはほぼ今日の社会科学や人文科学にあたるが、ときとして歴史科学あるいは文化科学ともよばれた精神科学の概念を明確化し、その方法論的基礎づけを確立したのはとりわけディルタイである。彼はそれを「歴史的社会的現実を対象とする科学」「精神的諸現象の経験科学」と規定し、自然科学が物理的現象を因果的、仮説的に「説明」するのに対して、それは独自の固有な方法によって精神的世界を認識すると説く。すなわち「体験」を記述分析し、さらにいっそう普遍的に精神的生の客観態である「表現」を「理解」「解釈」することによって、生の構造連関、意味連関を概念的に把握することが、精神科学の課題とされるのである。

伊東祐之

『ディルタイ著、山本英一・上田武訳『精神科学序説』上下(1979、81・以文社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「精神科学」の意味・わかりやすい解説

精神科学 (せいしんかがく)
Geisteswissenschaften[ドイツ]

1840年代以来の用語。はじめヘーゲル学派に単数形の〈精神の学〉〈精神学〉〈精神論〉などと訳される用法があるが,J.S.ミルの《論理学体系》(1843)の独訳(1849)に当たり,自然科学に対立する〈道徳科学moral sciences〉が精神諸科学と複数形で訳され,ディルタイの《精神諸科学序論》(1883)やブントの著作活動によって流布し,自然科学以外の経験科学の総称とされるに至った。ディルタイはその対象を歴史的社会的現実とし,方法的基礎ははじめは記述的分析的心理学のちには解釈学とした。その後,心理学と歴史の位置づけをめぐって論争が生じ,文化科学という名称が取って代わるようになった。
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百科事典マイペディア 「精神科学」の意味・わかりやすい解説

精神科学【せいしんかがく】

ドイツ語Geisteswissenschaftの訳。自然科学に対する語で,人間精神の客観的所産としての文化形象(学問,芸術,宗教,法律,政治,経済など)を対象とする学問をいう。リッケルトのいう文化科学に当たる。ブントでは,精神過程の学としての心理学を基礎にした,精神的所産の学としての特殊科学および歴史学の総称であり,ディルタイでは,歴史的・社会的現実をその対象とする諸科学の体系。
→関連項目人文科学

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世界大百科事典(旧版)内の精神科学の言及

【ディルタイ】より

…ドイツ観念論哲学と歴史主義の遺産を継承して,ゲーテ時代の精神的巨人たちの優れた評伝(《体験と創作》として1905年にまとめられたゲーテ論やヘルダーリン論)や,ルネサンスやライプニッツに関する卓抜な論稿を著し,いわゆる精神史的傾向の中心的存在となった。これらはドイツ文学研究をはじめとする個別的精神科学に大きな影響を与えている。だが,彼の哲学的意義は,いわゆる精神科学の存立根拠と方法意識に関する――自己の具体的な歴史研究に根ざした――鋭く深い反省的考察にある。…

【人間科学】より

…とくに人間を精神的存在としてとらえる哲学的伝統の強かったドイツでは,経験科学の伝統の強いイギリスやフランスに対して,この矛盾に敏感であった。イギリスでは,たとえばJ.S.ミルはモラル・サイエンシズという言葉で歴史学,文献学(言語学),経済学,社会学,人類学,心理学,法学,宗教学などを含む〈人間本性に関する諸科学sciences of human nature〉を意味したが,この語はドイツ語に訳されて〈精神科学Geisteswissenschaft〉となり,やがてディルタイが客観化された精神としての〈文化〉を理解する解釈学的探求の学をこの名で呼んだ。また新カント学派のウィンデルバントやリッケルトは,〈歴史科学Geschichtswissenschaft〉〈文化科学Kulturwissenschaft〉という語で,人文諸科学を自然科学とは本質的に異なる科学として分別しようとした。…

※「精神科学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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