文化財の不正な海外流出を規制し、原産国や原所有国での保存・保護を原則とする国際条約。盗難、盗掘、略奪された文化財の輸入禁止、もともと文化財があった国への返還・回復義務、自国の文化財の輸出規制などを定めている。1970年に国連教育科学文化機関(UNESCO(ユネスコ))総会で採択され、1972年に発効した。日本での正式名称は「文化財の不法な輸入、輸出及び所有権移転を禁止し及び防止する手段に関する条約」で、ユネスコ条約ともよばれる。日本は2002年(平成14)に批准。2014年2月時点での締約国は125か国である。
対象となる文化財は、動物学・植物学・鉱物学・解剖学・古生物学に関する希少な収集品や標本、歴史・各国指導者・思想家・科学者・芸術家に関する貴重な物件、考古学上の発掘品や遺跡の一部、銘文・貨幣・印鑑、民族的・美術的価値のある物件、希少価値のある書籍・文書、切手・収入印紙、音声・写真・映画による記録、製作後100年を超える家具・楽器などである。同条約は、加盟国が条約を批准する以前に起きた問題などには適用されないが、エジプトやギリシアだけでなく、アジア、中南米などの遺跡から多くの文化財が盗まれており、多くの国の間で文化財返還問題が発生している。返還要求されているおもな文化財には、大英博物館の「ロゼッタストーン(ロゼッタ石)」(要求国エジプト)や「パルテノン神殿の彫刻像エルギン・マーブルズ」(要求国ギリシア)、メトロポリタン美術館の「ハトシェプスト女王の胸像」(要求国エジプト)、プーシキン美術館の「プリアモスの宝物」(要求国トルコ)などがある。また、イラク戦争時にイラク国立博物館から多くの収蔵品が略奪された例など紛争時の流出も多いが、返還はあまり進んでいない。日本では、長崎県対馬(つしま)市の寺から盗まれた「観世音菩薩坐像(ざぞう)」の返還に対し、もともと韓国から略奪されたものであるとして韓国政府に返還を拒否される問題などが発生している。
条約に反対する国や博物館・美術館などは、(1)最新設備の整った施設で保管・保存することで貴重な文化財の散逸、破損、劣化などを防ぐことができる、(2)一拠点に文化財が集積することで学術的な研究が容易で、普遍的にあらゆる人々へ奉仕するのに役だつ、(3)過去の行為は現在と異なる価値観でなされたと判断すべきである、などを理由として、原産国・原所有国への一律返還原則に反論している。なお、文化財を保護するための条約には、同条約のほか、戦時に文化財を守る「ハーグ条約(武力紛争の際の文化財保護条約)」(1954年採択、1956年発効)や、盗まれた文化財の返還請求権などを定めた「ユニドロワ条約」(1995年採択、1998年発効)がある。
[編集部]
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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