新・平家物語(読み)しんへいけものがたり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「新・平家物語」の意味・わかりやすい解説

新・平家物語
しんへいけものがたり

吉川英治の代表的な歴史長編小説。1950年(昭和25)6月~57年3月『週刊朝日』連載。1951~57年朝日新聞社刊。全24巻。源平二氏の興亡に材をとった叙事詩的大作で、歴史のなかに生きる天皇から庶民までの動きを幅広くとらえ、それを時の流れに即して浮き彫りしており、国民文学の一成果と高く評価された。巻末に近く幸福とは何かについて語りあう麻鳥(まとり)夫妻述懐のなかに作者なりの平和への祈念が託されていて、戦争の惨禍をくぐり抜けてきた読者の共感を誘い、『週刊朝日』の100万部突破を実現させた。過去を描いて現代を照応させる「後鏡としての文学」の意図は、この作品でみごとに結実した。

尾崎秀樹

『『新・平家物語』全16冊(講談社・吉川英治文庫)』『『新・平家物語』全12巻(1971・六興出版社)』『『新・平家物語』全8冊(『吉川英治全集32~39』1981~82・講談社)』

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デジタル大辞泉プラス 「新・平家物語」の解説

新・平家物語

①吉川英治の長編歴史小説。平家だけでなく、源氏、奥州藤原氏なども含め、平安時代から鎌倉時代に至る争覇興亡を広い視点で描く大作。NHK人形劇「平家物語」(1993-1995)の原作。その他映画化されたものとして、衣笠貞之助監督・長谷川一夫主演「新・平家物語 義仲をめぐる三人の女」(1956)、島耕二監督・淡島千景主演「新・平家物語 静と義経」(1956)がある。
②1955年公開の日本映画。①を原作とする。監督:溝口健二脚色:依田義賢ほか、撮影:宮川一夫。出演:市川雷蔵、久我美子、林成年、木暮実千代大矢市次郎進藤英太郎、菅井一郎ほか。
③1972年放映のNHKの大河ドラマ。①を原作とする。平清盛による政権掌握から、壇ノ浦の戦いまでの平家の盛衰を描く。脚本:平岩弓枝。音楽:冨田勲。出演:仲代達矢、中村玉緒ほか。

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