新聞倫理綱領(読み)しんぶんりんりこうりょう

改訂新版 世界大百科事典 「新聞倫理綱領」の意味・わかりやすい解説

新聞倫理綱領 (しんぶんりんりこうりょう)

新聞がその社会的責任を果たすために,新聞社あるいはその団体が公表したみずからに課す倫理基準。19世紀末からアメリカではイェロー・ジャーナリズムが興り,それに対する民衆批判も高まったために,まずいくつかの新聞社がそれぞれ自社の倫理綱領を設けたが,1923年にはアメリカ新聞編集者協会American Society of Newspaper Editors(ASNE)が第1回年次総会で〈ジャーナリズム基準The Canons of Journalism〉を採択した。そして,60年代になると公民権運動やベトナム戦争報道について読者の批判が高まるなか,同協会は75年これまでの基準を若干改定して〈原則声明Statement of Principle〉を採択した。またAP通信加盟社編集局長会も同75年これと別に〈倫理綱領〉を採択した。このほかでは旧西ドイツで1973年,ドイツ新聞評議会が〈新聞基本綱領〉を制定している。

 日本では1946年7月占領軍総司令部の強い指示と戦争協力への反省によって,アメリカの〈ジャーナリズム基準〉に範をとった〈新聞倫理綱領〉が全日刊紙代表によって採択された。同時にこの綱領を守ることを誓った社を会員に日本新聞協会が結成されその実践に努めることになった。綱領は〈新聞の自由〉〈報道,評論限界〉〈評論の態度〉〈公正〉〈寛容〉〈指導・責任・誇り〉〈品格〉の7項目から成る。新聞協会ではこのほか,54年に〈新聞販売綱領〉,76年に〈新聞広告倫理綱領〉を制定し,販売,広告業務においても自主規制措置をもっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「新聞倫理綱領」の意味・わかりやすい解説

新聞倫理綱領
しんぶんりんりこうりょう

新聞メディアがその総意として遵守することを誓約した憲章。2000年(平成12)6月、日本新聞協会は、1946年(昭和21)に制定して以来長く護持してきた倫理綱領を全面的に改め、新しい新聞倫理綱領を制定した。新綱領は、旧綱領と同じく、新聞が高い倫理水準を保ち、職業の権威を高め、社会から期待される責任を果たすための指導理念であることを約束した。その前文で、国民の知る権利が民主主義社会を支える普遍の憲法原理であることを訴え、新聞がその担い手としてもっともふさわしいと述べ、本文においては、「自由と責任」「正確と公正」「独立と寛容」「人権の尊重」「品格と節度」の5項目を掲げて、21世紀の新聞の使命を説いている。

 旧綱領は、第二次世界大戦後の1946年(昭和21)、GHQ(連合国最高司令官総司令部)の指導と示唆を受けて、日本新聞協会が制定した。それは、当時の時代状況を反映して、日本が民主的平和国家として発展するという理念に基づき、新聞の「指導精神」として作成された。なお、これを基盤として、54年には「新聞販売綱領」、76年には「新聞広告倫理綱領」が制定され、これらは2000年時点においても堅持されている。ただし、新しい綱領は「品格と節度」の項で、広告表現の品格とともに販売における節度と良識をも説いている。

[林 利隆]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「新聞倫理綱領」の意味・わかりやすい解説

新聞倫理綱領
しんぶんりんりこうりょう

日本新聞協会が,新聞界の倫理水準の向上のために自主的に定めた綱領。 1946年7月 23日の同協会の設立総会で決定された。第2次世界大戦直後の新聞界に起った民主化運動の高まりや相次ぐ新興紙の創刊などの情勢を反映しながら,アメリカ新聞編集者協会が 1923年に採択した新聞倫理綱領などを手本にして作成されている。 55年に多少の手直しがなされた。新聞の自由,公正,寛容,品格など7項目にわたり,新聞のもつ社会的責任を果そうとする意欲を示し,さらに,この精神は記者の言動を律する基準となるだけでなく,新聞に関する従業者全体に対して推奨されるべきものとしている。

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