中国古代におけるさまざまの専門的技術,技芸の総称。方術を駆使した人たちは〈方士〉とよばれる。《荘子》天下篇では,〈道術〉にたいして〈方術〉の語が用いられ,普遍的,根源的な道理の実際面への運用,したがって一面的,局部的な学問技術を意味しているが,後世にいたるまで方術には蔑称のひびきがともなう。漢代における方術の具体的な内容は,《漢書》芸文志が数術略にかぞえあげている天文,暦譜,五行,蓍亀(きき)(占筮),雑占,形法(風水ならびに相術)の六家,方技略にかぞえあげている医経,経方(治療術),房中(男女交合の術),神僊(仙)の四家をはじめとして,諸子略のなかの陰陽家,小説家等にうかがうことができる。《後漢書》には方術伝が,また《三国志》には方伎伝が設けられ,ときとして術芸伝や芸術伝と名称を変えつつ後世の正史にも受けつがれてゆく。たとえば《後漢書》方術伝では,鬼神役使,形法,星占,讖緯(しんい),災異,風角(風向きによる占い),望気(気の観察による占い),医巫などの諸術の持主があつかわれている。占いなどの神秘的な技術,技芸が大半をしめるけれども,科学的ないしは擬似科学的とよぶべきものも含まれていることに注目される。とくに《魏書》術芸伝以後,建築技師や工芸技術者など“もの”を作りだす人たち,あるいはまた音楽家などのいわゆる芸術家もあつかわれるようになる。
執筆者:吉川 忠夫
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