日夏耿之介(読み)ヒナツコウノスケ

デジタル大辞泉 「日夏耿之介」の意味・読み・例文・類語

ひなつ‐こうのすけ〔‐カウのすけ〕【日夏耿之介】

[1890~1971]詩人・英文学者。長野の生まれ。本名、樋口国登。神秘的、高踏的な詩風確立詩集転身の頌」「黒衣聖母」、詩史明治大正詩史」など。

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精選版 日本国語大辞典 「日夏耿之介」の意味・読み・例文・類語

ひなつ‐こうのすけ【日夏耿之介】

  1. 詩人、英文学者。本名樋口国登(くにと)。長野県出身。早稲田大学英文科卒。在学中、西条八十らと「聖盃」を創刊。大正一一年(一九二二)から昭和二〇年(一九四五)まで早大で講義批評家としてもすぐれ、訳詩にも業績を残した。また、キーツ研究で文学博士号を受ける。著作「転身の頌」「黒衣聖母」「明治大正詩史」など。明治二三~昭和四六年(一八九〇‐一九七一

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20世紀日本人名事典 「日夏耿之介」の解説

日夏 耿之介
ヒナツ コウノスケ

大正・昭和期の詩人,英文学者



生年
明治23(1890)年2月22日

没年
昭和46(1971)年6月13日

出生地
長野県下伊那郡飯田町(現・飯田市)

本名
樋口 圀登

別名
別号=黄眠,溝五位

学歴〔年〕
早稲田大学英文科〔大正3年〕卒

学位〔年〕
文学博士〔昭和14年〕

主な受賞名〔年〕
読売文学賞(文学研究賞・第1回)〔昭和24年〕「改定増補明治大正詩史」,日本芸術院賞(文芸部門・第8回)〔昭和27年〕「明治浪曼文学史」「日夏耿之介全詩集」,飯田市名誉市民〔昭和28年〕

経歴
早大在学中の大正元年、西條八十らと「聖杯」を創刊、詩作を発表し、6年「転身の頌」を刊行。9年「ワイルド詩集」を翻訳し、10年「黒衣聖母」を刊行。11年早大文学部講師に就任。昭和14年「美の司祭」で文学博士となる。その間「大鴉」「海表集」「院曲サロメ」などを翻訳刊行する。象徴詩人として活躍する一方、翻訳、評論と幅が広く、15年頃から研究評論の仕事が多くなり、16年「輓近三代文学品題」を、19年「鷗外文学」などを刊行する一方、「英吉利浪曼象徴詩風」なども刊行。24年「改訂増補明治大正詩史」で読売文学賞を、27年「明治浪曼文学史」「日夏耿之介全詩集」で芸術院賞を受賞したほか、三好達治らと共同監修の「日本現代詩大系」で毎日出版文化賞を受賞している。27年から36年まで、青山学院大学教授。28年には第1回の飯田市名誉市民に選ばれ、31年より飯田市に居住。幅広い活躍で、著書も数多く、「日夏耿之介全集」(全8巻 河出書房新社)がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「日夏耿之介」の意味・わかりやすい解説

日夏耿之介
ひなつこうのすけ
(1890―1971)

詩人、英文学者。明治23年2月22日、長野県下伊那(いな)郡飯田(いいだ)町に生まれる。本名樋口国登(ひぐちくにと)(圀登は愛用した字体で、戸籍は國登)。雅号は夏黄眠(かこうみん)、黄眠道人、聴雪盧(ちょうせつろ)主人など二十数種を数える。早稲田(わせだ)大学英文科卒業。1917年(大正6)12月、象形文字の「形態と音調との錯綜(さくそう)美」を基調とした第一詩集『転身の頌(しょう)』を刊行。ついで21年6月、第二詩集『黒衣聖母』を世に送り、自らの詩風を「ゴスィック・ローマン詩体」と称した。「月光(つきかげ) 大地(つち)に降(お)り布(し)き/水銀の液汁を鎔解(とか)しこんだ天地万物(てんちばんぶつ)の裡(あはひ)/ああ 儂(わ)が旅(ゆ)く路は/担担とただ黝(くろ)い」(「道士月夜の旅」I)。この「ゴスィック・ローマン詩体」は錬金(れんきん)叙情詩風として『咒文(じゅもん)』(1933)において完成する。

 1922年より早稲田大学文学部において教鞭(きょうべん)をとり、『英国神秘詩鈔(しょう)』(1922)、『院曲撒羅米(サロメ)』(1938)などの翻訳、二巻からなる大著『明治大正詩史』(1929)や学位論文『美の司祭』(1939)などの評論研究の分野でも優れた業績を残した。早大、青山学院大教授。52年(昭和27)、『明治浪曼(ろうまん)文学史』(1951)ならびに『日夏耿之介全詩集』(1952)により日本芸術院賞を授けられる。昭和46年6月13日没。

[窪田般彌]

『『日夏耿之介全集』全8巻(1973~78・河出書房新社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「日夏耿之介」の意味・わかりやすい解説

日夏耿之介 (ひなつこうのすけ)
生没年:1890-1971(明治23-昭和46)

詩人,英文学者。長野県の生れ。本名樋口国登(くにと)。早大英文科卒。在学中から詩作を始め,《聖杯》(のち《仮面》と改題)を出し,同人の西条八十らと大正期の象徴派新人として詩壇に登場,病弱を克服しつつ重厚で幻想的な詩風(ゴシック・ロマン体として有名)の《転身の頌(しよう)》(1917)で注目を浴びる。第2詩集《黒衣聖母》(1921)でその詩風を確立,《咒文(じゆもん)》(1933)で詩業は終結するが,一方キーツをはじめとする英文学の造詣も深く,早大教授を務め,論文《美の司祭》(1939)で文学博士となり,かたわら《鷗外文学》(1944),《荷風文学》《谷崎文学》(ともに1950)などの評論活動も精力的に見せた。なかでも読売文学賞を得た《明治大正詩史》(初版1929)は歯に衣きせぬ手きびしい詩史の書として有名。大正期の自由な風潮のなかで,明治のハイカラな詩風を受けつぎながら,海外詩の知性を摂取し,しかも漢字多用の独創的な個性を存分に発揮した詩人である。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日夏耿之介」の意味・わかりやすい解説

日夏耿之介
ひなつこうのすけ

[生]1890.2.22. 長野,飯田
[没]1971.6.13. 飯田
詩人,英文学者。本名,樋口圀登 (くにと) 。文学博士。 1914年早稲田大学英文科卒業。在学中から詩誌『聖盃』を創刊 (1912) して詩作を始め,西条八十とともに新象徴派詩人として認められた。早稲田大学で英文学を講じながら『転身の頌』 (17) ,『黒衣聖母』 (21) ,『咒文 (じゅもん) 』 (33) などを刊行。漢語を多用して視覚的,聴覚的効果の鮮かなスタイルを確立し,幻想と神秘に富む独自の詩風から学匠詩人の名で呼ばれた。一方詩誌『奢ば都 (サバト) 』を刊行 (26) ,堀口大学,西条八十らと『PANTHÉON』を創刊 (28) して後進を指導し,また大著『明治大正詩史』 (2巻,29) を完成。文学評論にも『輓近三代文学品題』 (41) ,『鴎外文学』 (44) ,『荷風文学』 (50) ,『明治浪漫文学史』 (51) などがある。 52年日本芸術院賞受賞。

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百科事典マイペディア 「日夏耿之介」の意味・わかりやすい解説

日夏耿之介【ひなつこうのすけ】

詩人,英文学者,評論家。本名樋口圀登(くにと)。長野県生れ。早大英文卒。詩集《転身の頌》《黒衣聖母》などにより,ゴシック・ロマン体と称する荘重幽玄な詩体で大正詩壇に新風を吹きこんだ。またキーツをはじめとする英文学研究のかたわら,鴎外,荷風,谷崎潤一郎らについての評論活動もさかんで,とくに《明治大正詩史》は著名。他に《明治浪曼文学史》などがある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「日夏耿之介」の解説

日夏耿之介 ひなつ-こうのすけ

1890-1971 大正-昭和時代の詩人,英文学者。
明治23年2月22日生まれ。第1詩集「転身の頌(しょう)」で注目され,大正10年「黒衣聖母」でゴシック-ローマン詩体と称する詩風を確立した。早大,青山学院大教授。昭和27年芸術院賞。昭和46年6月13日死去。81歳。長野県出身。早大卒。本名は樋口圀登(くにと)。号は夏黄眠(かこうみん)など。著作に「明治大正詩史」,訳書に「ワイルド全詩」など。

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367日誕生日大事典 「日夏耿之介」の解説

日夏 耿之介 (ひなつ こうのすけ)

生年月日:1890年2月22日
大正時代;昭和時代の詩人;英文学者
1971年没

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世界大百科事典(旧版)内の日夏耿之介の言及

【美文】より

…ふつうは〈美文韻文〉と併称する。文語定型詩の枠に盛り切れない詩想を自由に文語文で表現しようとしたもので,日夏耿之介(こうのすけ)によると,近世から明治初期に至る間に〈漢文の一般的普及と和文の近代化〉との混交という現象が進行したものを,この時期になって意識的にとらえ直したものだという(《明治大正詩史》)。散文の変革の過程で,文語文の遅れを逆手にとって磨き上げたと言うべきものだが,その文学的感度は,一時的な盛行を見せた文語定型詩のレベルにほぼ等しい。…

※「日夏耿之介」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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