日本改造法案大綱(読み)にほんかいぞうほうあんたいこう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「日本改造法案大綱」の意味・わかりやすい解説

日本改造法案大綱
にほんかいぞうほうあんたいこう

1919年(大正8)8月、北一輝(きたいっき)が書いた綱領的著作。昭和初期の国家主義運動に巨大な影響を与えた。内容的に、〔1〕天皇大権によるクーデターと国家機関の破壊、〔2〕新しい統治機構の組織と国家社会主義的政策の提起、〔3〕広大な地域を支配する大帝国の建設、の三つの部分に分かれる。枢密院貴族院・華族制の廃止、天皇財産の国有化私有財産・私有地の制限と超過分の国有化など一見すると急進的な主張があるが、普通選挙権から婦人を除外、小作の存在を「神意」とするなど、ヨーロッパ・ファシズムスローガンと比較すると後れた思想もみられる。しかし、領土の少ない国は多い国を侵略する権利があるとし、シベリアから東南アジア、オーストラリアに至る大帝国をつくるプログラムは、ヒトラー顔負けの強盗的論理といえる。最初は「国家改造案原理大綱」のタイトルで頒布されたが、出版法違反で発禁となり、以後北から版権を譲られた西田税(みつぎ)が、伏せ字だらけの発刊をする一方、伏せ字を埋めたパンフレット版を青年将校に配布するなどして、日本右翼運動最高の教典となった。

[大野達三]

『『北一輝著作集 2、3巻』(1972・みすず書房)』

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百科事典マイペディア 「日本改造法案大綱」の意味・わかりやすい解説

日本改造法案大綱【にほんかいぞうほうあんたいこう】

北一輝が1919年上海で執筆した著作。日本の国際的孤立,国内の階級対立激化を打開するための国家改造を述べる。3年間の憲法停止,戒厳令施行,私有財産の制限,在郷軍人基礎とする改造内閣の組閣,華族制・貴族院の廃止などを構想。青年将校に読まれ,のちの日本ファシズム運動の経典となった。二・二六事件はこの著作内容の実現を目ざして起こされた。
→関連項目猶存社

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「日本改造法案大綱」の解説

日本改造法案大綱
にほんかいぞうほうあんたいこう

北一輝(きたいっき)により執筆された国家改造の理論書。1919年(大正8)「国家改造案原理大綱」として上海で執筆印刷されたが発禁処分となり,加筆訂正ののち23年改題して改造社から刊行。出版の年次などにより異同はあるが緒言・本論・結言からなり,国家改造のための天皇による戒厳令施行,憲法の停止,国家改造内閣の組織,貴族院の廃止,在郷軍人会の重用,私有財産の制限,大企業の国営化,労働省の設置などを内容とした。国家社会主義による日本の国家改造プログラムを体系的に展開し,民間右翼・青年将校の運動に大きな影響を与えた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日本改造法案大綱」の意味・わかりやすい解説

日本改造法案大綱
にほんかいぞうほうあんたいこう

北一輝著。 1921年刊。中国の排日活動のさなか,上海で日本の対支政策を憂慮しつつ,執筆されたものである。北はこれを「日本民族の社会革命論なり」と称し,「国民の天皇」「私有財産制限」「土地処分」「大資本の国有化」「労働者の権利」など8項目から成る国家社会主義的改造計画を説いている。

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旺文社日本史事典 三訂版 「日本改造法案大綱」の解説

日本改造法案大綱
にほんかいぞうほうあんたいこう

大正時代,北一輝の著書
1919年刊。天皇の大権の強調,憲法の停止,議会の解散,私有財産の制限,銀行・貿易・工業の国家管理など,右翼革命思想のうちヨーロッパのファシズム思想に最も近い。昭和期の軍部・右翼に大きな影響を与えた。

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