日本大百科全書(ニッポニカ) 「日本海側拠点港」の意味・わかりやすい解説
日本海側拠点港
にほんかいがわきょてんこう
中国、韓国、ロシアなどの日本海対岸諸国の経済発展を日本の成長に取り込み、国際競争力を強化することなどを目的として、拠点に選定された港。国土交通省が2010年(平成22)に、日本海側拠点港の形成に関する検討委員会を設置し、2011年に19港・28計画、そのうち5港を総合的拠点港として、また、別に4港・4計画を拠点化形成促進港として選定した。選定においては、2011年の東日本大震災時に、日本海側の港湾に太平洋側の港湾の代替機能が求められたことを考慮し、災害に強い物流ネットワークの構築が重視された。なお、選定後も委員会を毎年1回程度開き、それぞれの計画の実施状況を継続して調査・検討している。
総合的拠点港は新潟港、伏木(ふしき)富山港、下関(しものせき)港、北九州港、博多(はかた)港である。拠点港は輸送モードや貨物の種別により以下のように分けられている。国際海上コンテナ(博多港、北九州港、下関港、新潟港、伏木富山港、秋田港、伊万里(いまり)港、境港、舞鶴(まいづる)港、金沢港)。国際フェリー・国際RORO船(自動車専用船)(博多港、北九州港、下関港、敦賀(つるが)港、稚内(わっかない)港、伏木富山港、舞鶴港)。国際定期旅客(博多港、北九州港、下関港、長崎港、佐世保(させぼ)港)。外航クルーズ・定点クルーズ(博多港、長崎港)。外航クルーズ・背後観光地クルーズ(小樽(おたる)港、伏木富山港、舞鶴港、金沢港、境港)。原木(境港、浜田港)。LNG(直江津(なおえつ)港、新潟港、石狩(いしかり)湾新港)。リサイクル貨物(酒田(さかた)港)。拠点化形成促進港は留萌(るもい)港(原木)、能代(のしろ)港(リサイクル貨物)、七尾(ななお)港(原木)、唐津(からつ)港(外航クルーズ・背後観光地クルーズ)である。
日本ではハブ港湾が太平洋側に集中しているため、1990年代以降になると、日本海側の港湾は中国や韓国の発展と結びつきながら、環日本海経済圏としての成長を目ざしてきた。たとえば釜山(ふざん)港(韓国)などの対岸のハブ港湾と接続し、定期航路を確保することで、日本海側の港湾が扱う2014年のコンテナ取扱総量は15年前の約7倍にまで拡大している。日本海側拠点港として機能の選択と集中を図ることで、日本海対岸の国々との連携をいっそう強化するとともに、国内の国際コンテナ戦略港湾などと連携を強化し、競争力を強める必要に迫られている。
[編集部 2016年5月19日]