日本大百科全書(ニッポニカ) 「日本証券金融」の意味・わかりやすい解説
日本証券金融(株)
にほんしょうけんきんゆう
株式の信用取引の決済に必要な資金や株券を融通する国内唯一の証券金融会社。株式・金融市場では「日証金」という略称で知られる。1927年(昭和2)に東株代行として発足し、1950年(昭和25)に証券金融の専門機関として業務を開始した。本社は東京都中央区日本橋茅場町(にほんばしかやばちょう)にあり、資本金は100億円。従業員数は241人(2023年3月時点)。
顧客から信用取引の申込みがあった証券会社が自社で資金や株券を調達できない場合、日本証券金融が証券会社に対し資金を融資したり、株券を貸したりする。日本証券金融が融資した金額や貸した株券の残高を日証金残高とよび、日々公表されている。1989年(平成1)からは債券貸借取引の仲介業務を開始し、1998年には100%子会社の日証金信託銀行を設立して信託銀行業務を兼営している。2005年(平成17)からは一般信用取引による信用買いの決済資金の貸付け業務も始めた。東京証券取引所グループと大阪証券取引所の経営統合に伴い、2013年7月に大阪証券金融(略称「大証金」)と合併。さらに2017年に解散した中部証券金融(略称「中証金」)の業務も継承し、証券金融会社は日本証券金融のみとなった。金融商品取引法に基づき、内閣総理大臣の免許を受けており、また東京証券取引所、名古屋証券取引所の指定証券金融機関でもある。
株式市場が活況で、投資家の投資意欲が高まると、信用取引も増えるため、業績がよくなる傾向がある。なお、株の信用取引をめぐって、投資家が証券会社を通じて株を借りるときの手数料(品貸料(しながしりょう))を不当につり上げていたとして、2007年に金融庁から業務改善命令を受けている。
[矢野 武 2024年10月17日]