1980年代(昭和55~64)まで存在した政府系8事業の総称。三公社とは、日本国有鉄道(国鉄)、日本専売公社(専売)、日本電信電話公社(電電)をさし、五現業とは、郵政省による郵政事業、大蔵省の造幣局と印刷局による造幣事業と印刷事業、農林水産省の外局である林野庁による国有林野事業、および通商産業省によるアルコール専売事業をさした。1982年(昭和57)アルコール専売事業が新エネルギー総合開発機構(1988年新エネルギー・産業技術総合開発機構と改称)に移管されて三公社四現業になった。さらに1985年4月、日本専売公社が日本たばこ産業株式会社(JT)に、日本電信電話公社が日本電信電話株式会社(NTTと略称、1999年7月東日本電信電話、西日本電信電話、NTTコミュニケーションズおよび持株会社の日本電信電話に分割)に、それぞれ改組民営化され、一公社四現業となった。ついで1987年4月から、日本国有鉄道も北海道・東日本・東海・西日本・四国・九州の各旅客鉄道会社と貨物鉄道会社に分割、民営化された(各社ともJR東日本などと略称)。さらに、2001年(平成13)1月の中央省庁再編により、郵政事業は総務省郵政事業庁に、造幣局と印刷局は財務省の所属となった。また2003年4月には、郵政事業は日本郵政公社へ、造幣事業および印刷事業は、それぞれ独立行政法人造幣局、同国立印刷局へ組織変更され、さらに日本郵政公社は2007年10月に民営化されて日本郵政グループとなった。また2012年、国有林野事業は特別会計から一般会計に移管され国営企業ではなくなった。
三公社五現業の用語は、これら組織の職員の労働問題が、当時の公共企業体等労働関係法(現、行政執行法人の労働関係に関する法律)によっていたことに由来する。すなわち、これらの職員には団結権と団体交渉権はあるが、争議権は認められず、そのため、春闘のたびごとに公共企業体等労働委員会をめぐって問題の一括処理が図られたからである。この点を離れた三公社五現業の共通基盤は、純または準行政組織によって生産活動が行われていたことである。国鉄、専売、電電の元は、それぞれ鉄道省、大蔵省専売局、逓信省(ていしんしょう)であった。このような行政組織と活動内容のなじみにくい結合が非能率を生み、民営化の主張を生み出した。
[森本三男]
『占部都美著『公共企業体論』第2増補版(1969・森山書店)』▽『国営企業労働委員会事務局編『公共企業体等労働委員会の回顧』(1988・労務行政研究所)』
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… 公労法により,政令201号で失った団体交渉権と労働協約締結権とが回復されるとともに,争議行為が禁止された。三公社五現業の労使関係を統一的に公労法の規律の下に置いた理由は,三公社の行う事業の公共性と独占性とから生ずる職務の継続性の要請が,三公社の労働関係を民間の労働関係から区別され,五現業の事業は一般行政事務には関係がなく,むしろ三公社の事業に似ているという点にあった。 公労法による争議行為の禁止は憲法28条に違反するとの主張が強固なものとなり,特に三公社五現業の職員の労働組合によるスト権の奪還は長年の闘争目標となった。…
※「三公社五現業」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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