日焼け/色素性乾皮症(読み)ひやけしきそせいかんぴしょう(英語表記)Sunburn / Xeroderma Pigmentosum

家庭医学館 「日焼け/色素性乾皮症」の解説

ひやけしきそせいかんぴしょう【日焼け/色素性乾皮症 Sunburn / Xeroderma Pigmentosum】

[どんな病気か]
 日本語の「日焼け」は英語では2通りに表現されます。1つは太陽の光線に当たって間もなく皮膚が赤くなるサンバーン(sunburn)。もう1つはその後少ししてから黒くなるサンタンsuntan)です。ふつう、皮膚が少々赤くなる程度のサンバーンは、病気とは考えられていません。でも、紫外線の強いハワイなどにでかけ、快晴の日に浜辺で1日中肌をさらしていると、日暮れのころには皮膚に痛みを覚え、翌日には水疱(すいほう)(水ぶくれ)ができてしまいます。これは病的な日焼けです。
 サンバーンをおこす最少紫外線量を最少紅斑量(さいしょうこうはんりょう)と呼びますが、水疱ができるのは最少紅斑量の10倍以上の大量の紫外線を浴びたときです。3倍量でも皮膚がむくむことがあります。
 強いサンバーンをおこしやすいのは色素性乾皮症(しきそせいかんぴしょう)という病気が基礎にあることが多いのです。これは光線過敏(こうせんかびん)を特徴とする遺伝(いでん)性疾患の1つです。
[原因]
 日焼けでなぜ皮膚が赤くなるのかは、まだよくわかっていません。しかし、紫外線を浴びた皮膚表皮(ひょうひ)の角化(かくか)細胞やランゲルハンス細胞、色素細胞の遺伝子(いでんし)(DNA)には、紫外線独特の傷がたくさんできますが、酵素(こうそ)で速やかに修理されてもとどおりのDNAになります。ところが、DNAの傷を修復できない色素性乾皮症の子どもは、健康な人の約5分の1という少量の紫外線でも皮膚が赤くなります。夏の太陽を20分も浴びると顔が腫(は)れあがり、3日ほどのうちにサンバーン症状が徐々に増して水疱ができ、やけど状態になってしまいます。
 一方、健康な人の場合は、1時間くらい太陽光を浴びると軽いサンバーン状態になり、3日目ぐらいから褐色のサンタンが始まります。これはメラニン色素がつくられるためです。色素細胞がメラニン生成し、周辺の角化細胞に配分するのです。そして、角化細胞の核の上に帽子のように集まったメラニンが角化細胞の核のDNAに紫外線が当たるのを妨ぐのです。
[検査]
 色素性乾皮症の検査では、患者さんから小豆あずき)大ほどの皮膚片をとって、その線維芽細胞せんいがさいぼう)を培養(ばいよう)し、シャーレに蒔(ま)いて紫外線を当てます。すぐにチミジンというDNAの合成にかかわる物質が細胞の核内にとりこまれます。それを放射性同位元素(ほうしゃせいどういげんそ)でマークして小さなつぶとしてとらえ、顕微鏡(けんびきょう)でその数量をはかるのです。
 色素性乾皮症A群という重症例ではDNAの傷を治す能力が正常者の5%以下になりますが、細胞へのチミジンのとりこみ能力が正常者と変わらない色素性乾皮症もあります。バリアント型と呼ばれますが、この場合はもっと専門的な手法で診断されます。
 DNAの修復が遅れると細胞は死にます。また、まちがった修復がときにおこります。それが突然変異です。
●紫外線は免疫(めんえき)も抑制する
 皮膚はつねに外界からの侵入者にさらされているため、免疫系がよく発達しています。ところが、日焼けはその免疫力も抑制するのです。最少紅斑量の紫外線を3~4日間皮膚の同じ場所に当てた後、ハプテンという人工抗原で感作(かんさ)(ある抗原に過敏状態にする)しようとしてもできなくなります。
 これは、紫外線が皮膚の角化細胞にはたらき、ある種のサイトカイン(細胞の増殖(ぞうしょく)や機能を調節する物質)が生成・分泌されて、ランゲルハンス細胞の機能を障害するためと考えられています。
[予防]
 子どものころに強い日焼けをすると、がんに関連した遺伝子に変異が生じます(コラム「日焼けと皮膚がん」)。たとえば、10歳未満でオーストラリアに移民した白人は、10歳以降に移民した白人に比べ、皮膚がんにかかる率が3~5倍も高いことが判明しています。また、4歳と2歳のときに色素性乾皮症と診断された姉妹が、その後徹底した遮光(しゃこう)生活を続けたところ、姉は13歳で、妹は23歳で発がんしました。幼児期に日光にさらされた2年の差が、発がん年齢では10歳という差になったわけです。いずれも子どものころの日焼けが成人の皮膚の老化の誘因となったことを示しています。
 親ゆずりで子どものころから日焼けしやすい人は、サンスクリーン剤(遮光剤)を使ったり、帽子を着用したり日陰を利用するなど、過度の日焼けを避けることを心がけましょう。

出典 小学館家庭医学館について 情報