外郎(読み)ウイロウ

デジタル大辞泉 「外郎」の意味・読み・例文・類語

うい‐ろう〔‐ラウ〕【外郎】

《「うい(外)」は唐音
江戸時代、小田原名産の去痰きょたんの丸薬。げん礼部れいほう員外郎いんがいろう陳宗敬が日本に帰化し、博多で創製。その子孫が京都西洞院にしのとういんに住んで透頂香とうちんこうと称して売り出し、のち小田原に伝わったもの。ういろうぐすり。
米の粉に黒砂糖などをまぜて蒸した菓子名古屋・山口・小田原などの名物。ういろうもち。
外郎売り」の略。
[類語]羊羹練り羊羹蒸し羊羹栗蒸し羊羹水羊羹芋羊羹

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精選版 日本国語大辞典 「外郎」の意味・読み・例文・類語

うい‐ろう‥ラウ【外郎】

  1. 〘 名詞 〙 ( 外郎(がいろう)は中国の官名、定員外の職員の意。「うい」は唐宋音 )
  2. 元の礼部員外郎で、室町時代日本に帰化した陳宗敬の子孫の立てた家名。代々医薬を業とした。
    1. [初出の実例]「日本に外郎と云薬屋こそいづれの代の外郎であたやらう」(出典:史記抄(1477)五)
  3. 外郎家北条氏綱に献じてから小田原の名物となった丸薬。主に消化器疾患に用いられるが、痰(たん)切りや口臭を消すなどの効能もあり、また戦陣の救急薬ともしたという。殿上人が冠の中に入れて珍重したところから透頂香(とうちんこう)とも。外郎薬。外郎飴。痰切飴(たんきりあめ)
    1. [初出の実例]「潤体円〈三粒〉、唐人〈ういらう〉云々。定秋に申也」(出典:教言卿記‐応永一五年(1408)一一月晦日)
  4. ういろうもち(外郎餠)」の略。〔和漢三才図会(1712)〕
  5. ういろううり(外郎売)」の略。
    1. [初出の実例]「いつもの外郎(ウヰラウ)は、もう見えさうなものぢゃわいなア」(出典:歌舞伎・助六廓夜桜(1779))
  6. 疱瘡(ほうそう)の一種。かさぶたが外郎薬に似ているところからいう。
    1. [初出の実例]「外郎(ウヰラウ)松皮の類自今急度(きっと)相止、蜀黍(とうもろこし)一通りにて仕候事」(出典:談義本・八景聞取法問(1754)一)

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改訂新版 世界大百科事典 「外郎」の意味・わかりやすい解説

外郎 (ういろう)

薬および菓子の名。元朝が滅びたとき,礼部員外郎であった陳氏(宗敬,延祐,順祖などの名が伝えられるが,不詳)が日本へ亡命してきて博多に住んだ。多才な人で,とくに薬方にくわしかったため,足利義満は上洛を求めたが応ぜず,その子(宗奇,あるいは大年)が京都に移り住み,以後代々医を業として外郎家と呼ばれ,透頂香(とうちんこう)などの薬をも製した。《長禄二年以来申次記》などによれば,外郎家では毎年1月7日,12月27日に将軍に謁し,薬を献上する慣例であった。透頂香は,頭痛を去り胃熱を除き口中をさわやかにするとして歓迎されたが,同時に冠や烏帽子の中におさめて頭髪の臭気を防ぐにも用いられたためこの名がある。のち陳氏がこれを北条氏綱に献上してから小田原名物になったといい,外郎と通称されて普及,その行商人の姿は《外郎売》として歌舞伎にもとり入れられている。

 菓子のういろうは,ういろう餅ともいう。うるち米粉,もち米粉,黒砂糖に葛粉(くずこ)を加えて蒸した棹物(さおもの)の一種で,京都の菓子屋が外郎家から製法を伝授されたとする説もあるが,《和漢三才図会》のいうごとく,色が透頂香に似ていたための名と思われる。現在では,白砂糖を用いたものや,抹茶,小豆あんを加えたものなども作られており,名古屋,京都,山口などのものが名物として知られている。
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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「外郎」の解説

ういろう【外郎】

①和菓子の一種。上新粉などの米粉に砂糖と水を加えて練り、型に入れて蒸したもの。普通、棹物にするが、水無月などほかの菓子の生地としても用いる。白砂糖・黒砂糖を用いたもののほか、ひき茶やあずきなどを入れてさまざまな風味のものが作られる。また、米粉のほか、くず粉・わらび粉などのでんぷん、小麦粉などを用いるものもある。神奈川・小田原、愛知・名古屋、山口、三重などの名物菓子となっている。
②室町時代に中国からもたらされた痰切りの丸薬。◆元(げん)朝に仕え、大医院・礼部員外郎(がいろう)(「定員外」の意)の職にあった医師・陳宗敬(ちんそうけい)が南北朝時代の1368年日本に帰化し、役職名の読みを変え、「外郎(ういろう)」と名乗った。その後息子の大年宗奇(たいねんそうき)が幕府に招かれ、京都で作った薬が家名から「ういろう」と呼ばれるようになった。菓子は、大年宗奇が考案し使節の接待に用いたものとも、薬を飲んだあとの口直しに食べたものとも、また薬と色が似ていたものともいわれる。「うい」は唐音。

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日本の郷土料理がわかる辞典 「外郎」の解説

ういろう【外郎】


➀和菓子の一種。上新粉などの米粉に砂糖と水を加えて練り、型に入れて蒸したもの。普通、棹物にするが、水無月などほかの菓子の生地としても用いる。白砂糖・黒砂糖を用いたもののほか、ひき茶やあずきなどを入れてさまざまな風味のものが作られる。また、米粉のほか、くず粉・わらび粉などのでんぷん、小麦粉などを用いるものもある。神奈川・小田原、愛知・名古屋、山口、三重などの名物菓子となっている。
➁室町時代に中国からもたらされた痰切りの丸薬。◆元(げん)朝に仕え、大医院・礼部員外郎(がいろう)(「定員外」の意)の職にあった医師・陳宗敬(ちんそうけい)が南北朝時代の1368年日本に帰化し、役職名の読みを変え、「外郎(ういろう)」と名乗った。その後息子の大年宗奇(たいねんそうき)が幕府に招かれ、京都で作った薬が家名から「ういろう」と呼ばれるようになった。菓子は、大年宗奇が考案し使節の接待に用いたものとも、薬を飲んだあとの口直しに食べたものとも、また薬と色が似ていたものともいわれる。「うい」は唐音。

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朝日日本歴史人物事典 「外郎」の解説

外郎

室町時代に日本に帰化した医師・陳宋敬の子孫を称する。元の礼部省外郎の職にあった陳宋敬は,応安年間(1368~75)日本に亡命し,博多で医を業とした。その子・陳宋奇は足利義満の招きで上洛し,遣明船に乗り秘薬「透頂香」を伝える。以後,子孫は外郎家を称した。宋奇の孫・定治は北条早雲の招きで永正1(1504)年小田原に移る。「透頂香」は医薬品や消臭剤として用いられていたが,陳氏が北条氏綱に献上して以来,小田原名物外郎となった。近世には,2代目市川団十郎が「外郎売り」を演じ,歌舞伎十八番のひとつとなった。

(小松和彦)

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「外郎」の解説

外郎[菓子]
ういろう

中国地方、山口県の地域ブランド。
山口市・防府市などで製造されている。起源を室町時代に遡る菓子。山口の外郎は、米粉の代わりにわらび粉や葛粉など地下茎のでん粉を主原料とし、小豆や砂糖と混ぜて蒸し上げるのが特徴。米粉を使った外郎よりもあっさりした味わいである。

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「外郎」の解説

外郎 ういろう

陳宗敬(ちん-そうけい)

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