早変り(読み)はやがわり

精選版 日本国語大辞典 「早変り」の意味・読み・例文・類語

はや‐がわり‥がはり【早変・早替】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 歌舞伎などで一人の役者が同じ一つの場面ですばやく姿をかえ、二役以上を演じること。人形浄瑠璃では人形遣いが同一場面で一つの人形からすばやく他の人形に替えることをいう。
    1. 早変<b>①</b>〈戯場楽屋図会〉
      早変戯場楽屋図会
    2. [初出の実例]「佐野八、早替りにて小姓の形(なり)にて出で」(出典:歌舞伎・幼稚子敵討(1753)六)
  3. 姿や有様などをすばやくかえること。また、環境身分などを急変させること。
    1. [初出の実例]「況や大慈大悲の観世音は、三十三身の早替(ハヤガハリ)より」(出典:滑稽本・古朽木(1780)二)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「早変り」の意味・わかりやすい解説

早替り (はやがわり)

歌舞伎の演出用語。すばやく役柄を替わること。1人の役者が,一場内で二つ以上の役を演ずる場合に,短時間で身分,年齢,善悪などの人間性,男女の性別すら替わって登場すること。ケレンの一技法ともいえる。すでに宝永(1704-11)ごろから行われたが,早替りが多用されて流行したのは文化・文政期(1804-30)4世鶴屋南北時代からである。特に怪談物に多く,たとえば《東海道四谷怪談》におけるお岩と小仏小平の早替りなどがその例である。また,《お染の七役》のような,早替りそのものが眼目となる脚本も出現した。これらの影響で《忠臣蔵》《安達原》《妹背山》などにもこの演出を採り入れて演ずることが行われた。文化から天保期(1804-44)にことに流行した〈変化(へんげ)舞踊〉(変化物)も早替りの一種といえる。明治になってからは,とくに関西で好まれた。ある面では無理な演出を不自然でなく行うために,早拵えなどの技術や〈吹替え〉の演出も発達した。早拵えは舞台袖,道具裏,揚幕内に仮設した鏡台前で,衣装や鬘(かつら),ときには化粧まですばやく替える。旧来の方法に加え,現在ではマジック・テープなども利用されている。ただ単に早く役を替えるだけでなく,いかに違った人物像を印象づけるか,その替り方の趣向の楽しさを観客に示すのが,この演出の目的といえよう。

 また,人形浄瑠璃では,出遣いの人形遣いが瞬時にその衣装を着替えて別の人形を遣うことを早替りという。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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