明夷待訪録(読み)めいいたいほうろく

日本大百科全書(ニッポニカ)「明夷待訪録」の解説

明夷待訪録
めいいたいほうろく

中国、清(しん)代初期の黄宗羲(こうそうぎ)の主で、政治社会論の書。書名は『易経』の「るさが夷(そこな)われる」に基づき、暗黒の世にあって賢明な君主から治世の方策を訪(と)われるのを待つとの意。若いころから政治活動に従事し、清軍南下に際しては義勇軍を組織して抵抗した宗羲は、明(みん)朝王統が絶えたとの報を受け、痛恨のうちに前半生の決算として1663年にこの書を著した。明代思潮と東林学派の政治論を継承し、君臣論としては、君主は民衆の経済的欲求を充足させる義務があり、臣下は君主個人にではなく天下万民に奉仕すべきで、暴君に対しては儒教の伝統思想である易姓革命、君主交代を行うことが許されるとし、君主絶対の政治理念を批判した。また宮室、官僚、財政、軍備諸制度の抜本的改革、明滅亡の反省にたつ南京(ナンキン)主都論などを展開している。内容の激しさのため、清朝では禁書とされたが、清末の変法運動に際しては啓蒙(けいもう)書として大量に印刷され、運動に一役買った。

[佐野公治]

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旺文社世界史事典 三訂版「明夷待訪録」の解説

明夷待訪録
めいいたいほうろく

明末〜清初期の学者黄宗羲 (こうそうぎ) の著
明夷は「夜明け」といった意味。黄宗羲は明の遺臣として異民族王朝の清の統治に不満をもち,孟子主張と東林派のにもとづいて「天下が主で天子は客なり」と専制体制を強く批判し,具体的な政策を示した。また,その強い民族意識をもった排満論のため清朝では禁書とされたが,海外の華僑に流布し,清末期に民族革命の書として広く流布した。

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百科事典マイペディア「明夷待訪録」の解説

明夷待訪録【めいいたいほうろく】

中国,清朝初期の政治論書。黄宗羲(こうそうぎ)著。〈原君〉〈原臣〉の2編を主眼とし,〈天下が主で,天子は客にすぎぬ〉と説き,孟子の民本主義を敷衍(ふえん)し,官僚制腐敗と専制体制を痛烈に批判して,共和制提唱に至る。王夫之(おうふし)の《黄書》とともに清末知識人には民主主義・革命主義の書として大きな影響を与えた。

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デジタル大辞泉「明夷待訪録」の解説

めいいたいほうろく〔メイイタイハウロク〕【明夷待訪録】

中国、末・初の思想書。全1巻13編。黄宗羲こうそうぎ著。1663年成立。明の遺臣として満州民族王朝である清の専制君主政治を激しく批判したもの。清末の革命運動に大きな影響を与えた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「明夷待訪録」の解説

明夷待訪録
めいいたいほうろく
Ming-yi dai-fang-lu; Ming-i tai-fang-lu

中国,清代の政治論の書。黄宗羲著。2巻。康煕2 (1663) 年完成。専制体制を批判し,具体的政策論を述べたもので,清末の革命運動に大きな影響を与え,宣伝パンフレットなどに流布された。

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世界大百科事典 第2版「明夷待訪録」の解説

めいいたいほうろく【明夷待訪録 Míng yí dài fǎng lù】

中国,黄宗羲の政治評論書。明末社会の混乱,明・清の交替を経験した黄宗羲が,その原因理由を考察して,君主専制の否定,民本重民の視角から論陣を張った明末・清初政治評論集の白眉である。このゆえに黄宗羲と《明夷待訪録》は中国のルソー,中国の《民約論》として清末にもてはやされ排満興漢の起爆剤となった。全編の構成は原君,原臣,原法,置相,学校,取士,建都,方鎮,田制,兵制,財計,胥吏(しより),奄宦(えんかん)である。

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世界大百科事典内の明夷待訪録の言及

【黄宗羲】より

…彼の著述は,きわめて多いが,最も有名なのは,明代学術史である《明儒学案》62巻,宋・元学術史である《宋元学案》100巻(全祖望との共著)で,両書は宋代以後の学術思想を論ずる場合に必須のものである。また,《明夷待訪録(めいいたいほうろく)》1巻は,鋭い君主制批判と民本主義的内容のために,清末の改革運動のなかで再発見され,これによって黄宗羲は〈中国のルソー〉と称された。そのほかに漢代易学を再評価した《易学象数論》や明代の文章を集めた《明文海》《明文案》《明文授読》などがある。…

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