翻訳|occultation
掩蔽(えんぺい)ともいう。月や惑星が恒星,惑星,衛星を隠す現象。とくに月による星食は古くから観測されてきた。月は天球上を1日に13度の速度で西から東へ運行するので,その通路にある星は次々に月の東縁に消え,数十分~1時間後に西縁に現れて輝きをとりもどす。ただし,月の輝いている半縁での現象の認知は困難であり,また,他の半縁についても,月の周辺の空は散乱光で明るいために見にくく,実際に肉眼で見てそれと気づくのは特別に明るい星(1~2等級)に限られ,その機会は多くない。もともと日・月食ほど顕著な現象でもないので一般の関心をひかず,古記録も少ないが,《日本書紀》には640年(舒明12)に起こったアルデバランの星食の記事がある。
星食を観望する機会は望遠鏡を用いれば多くなる。口径10cm程度の小型望遠鏡でも7等星の現象を見ることができ,これなら1ヵ所にいて年間100~200回の機会がある。また中口径の望遠鏡で9等星まで見るとすれば年間1000回以上となる。一般に星食観測といえば,星が月の縁に接触する,すなわち星の光の明滅を検知してその時刻を測定することである。ふつうには小型望遠鏡を用いて目視によって現象を検知し,電鍵(でんけん)をたたいて時刻信号とともにクロノグラフに記録するという方法がとられているが,より精密な測定では,中口径の望遠鏡に光電管を取り付け,星の光を電流に変換して,それの現象時における急激な変化を電気的に記録するという方式がとられている。
現象の瞬時,星と月の縁と望遠鏡の3者はこの順に一直線上にある。したがって,いずれか2者の位置がわかっているものとすれば第3者の位置が決まることになるが,星食観測の結果を用いた研究では,これら3者のいずれもが検討の対象である。すなわち,星については星表の系統誤差,とくに春分点の位置に含まれる誤差の検出,月についてはもちろん運動理論の改良,また望遠鏡の位置については,それが乗っている地球の自転速度の変動などがおもな研究課題である。このほか,光電観測では,見かけ上はそれとわからない二重星の分離,月縁による回折像の解析による星の半径の推定などが行われている。また1977年3月の天王星による星食では,天王星に環があることが発見された。
星食観測は小型望遠鏡と時計さえあればでき,しかも測定の手続が簡明で誤差の入り込む余地が少ないので,古い時代の測定値でも,また現代の設備の十分でない私設天文台の観測値でも資料価値が高い。近代科学としての星食観測は1670年ごろにさかのぼることができるが,資料の散逸を防ぎ,またすべての資料を有効に活用するために1923年星食国際中央局がアメリカのイェール天文台に設置された。この中央局は43年イギリスのグリニジ天文台に移され,さらに81年には日本の海上保安庁水路部編暦課が引き継いでいる。ここには現在,約30ヵ国から年間1万個の資料を収集している。
執筆者:森 巧
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…食の起り方は二つに分けて考えると便利である。 第1は,遮へい天体のために観測者の視線が遮られて対象天体(図の天体A)が見えなくなる現象で,月が太陽を隠す日食,月が星を隠す星食,内惑星の太陽面通過,連星系の起こす食変光などが例である。この場合,観測者の位置によって対象天体の見え方が異なるのが特徴で,観測者が半影内にあるとき部分食,本影内にあるとき皆既食,偽本影内にあるとき金環食となる。…
※「星食」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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