一般的には緩和時間と同義語であるが、電気回路の緩和時間をとくに時定数と称する場合が多い。ある回路に電流を流すと、初めのうちは電流が時間的変化を示すが、ある程度の時間がたつと電流は時間的に変化せず定常電流が実現すると考えられる。電流を流し始めてから定常電流になるまでの時間の目安を時定数という。もうすこし正確にいうと、電流の時間的変化は通常e-t/Tという形(tは電流を流した瞬間からの時間)に表されるが、この指数関数中に現れるTが時定数である。一例として、自己インダクタンスLのコイル、電気抵抗Rの抵抗体を のように直列にして起電力Eの電池につないだ回路を考えてみる。スイッチを入れた瞬間を時間の原点にとると、回路を流れる電流Iは時刻tにおいて
と表され、時定数TはT=L/Rであることがわかる。Iとtの関数としてグラフで表すと のようになる。tが十分大きくなるとIは定常値E/Rに近づくが、t=TにおいてIはこの定常値のほぼ63%である。
[阿部龍蔵]
〈ときていすう〉とも呼ぶ。計測・制御系において,系の状態が一次遅れで表される場合に,ステップ入力を与えると,時間をt,最終変化をθ0として,出力はθ0(1-e⁻t/t)の形をとる。Tを時定数といい,最終値の63.2%に達する時間(単位秒)である。Tの小さいほど応答が早い。代表例として急激な温度変化に対する温度計の指示があげられる。一方,ステップ電圧を加えた場合,抵抗RとコンデンサーCからなる回路のコンデンサーの端子電圧,また抵抗とインダクタンスLからなる回路に流れる電流は,ともに上式と同様に表される。CRまたはL/Rを回路の時定数という。抵抗値Rの抵抗器で,残留インダクタンスをLとした場合L/Rを抵抗器の時定数という。
執筆者:平山 宏之
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…計測・制御系において,系の状態が一次遅れで表される場合に,ステップ入力を与えると,時間をt,最終変化をθ0として,出力はθ0(1-e-t/T)の形をとる。Tを時定数といい,最終値の63.2%に達する時間(単位秒)である。Tの小さいほど応答が早い。…
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[過渡現象の形]
図2の場合,最初の電流をI1,最終電流をI2(=V2/R)とし,電圧がV1からV2に変わったときをt=0とすれば,過渡現象中の電流iは, i=I1e-t/T+I2(1-e-t/T) =I2+(I1-I2)e-t/Tと表現できる。1行目の式で第1項はI1が消滅するようすを,第2項は定常状態に向かう変化を示しており,その変化を示す定数Tは時定数と呼ばれる。2行目の式の第2項は,初期値I1と最終値I2の差I1-I2が消滅するようすを表している。…
※「時定数」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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