(吉田一彦)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
奈良後期~平安初期の奈良薬師寺の僧。〈きょうかい〉とも呼ぶ。日本の説話文学集の創始とされる《日本霊異記(りよういき)》(822ころ)の撰述者。景戒に関してこれが唯一の資料である。因果応報の理の実在を確信し,中国の仏教説話集にならいながらも強い自国意識を失わず,善悪の現報をめぐる諸実例を全国的に集め,現世の行動の規範として人々を教化しようと撰述した。自伝的記事の中で,787年(延暦6)に在俗貧窮の身を前世の悪報と反省し,2度夢想発心し,8年後に伝灯住位の僧位を得たがなお身辺に変異をうけ,仏道精進をさらに決意している。聖武天皇代(724-749)とその時代に活動した行基を格別に称揚している点や,未公認の私度僧(しどそう)側の話が目だつ点など,彼の経歴をうかがわせる。学識等からみて有力戸主以上の出自だろうが,大伴氏,小子部(ちいさこべ)氏あるいは帰化人家系説,紀州名草郡出身説もある。なお,《本朝高僧伝》(1702)の景戒伝に学統を唯識(ゆいしき)と付するが,道昭-行基-景戒の流れからみて唯識・法相(ほつそう)か。
執筆者:小泉 道
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「けいかい」とも。生没年不詳。奈良時代の薬師寺僧。日本最初の仏教説話集「日本霊異記(りょういき)」の著者として有名。その記述から,紀伊国名草郡の大伴氏出身が有力,また私度僧(しどそう)の説話が多いことから,景戒を私度僧とする説もあるが,ともに確証はない。ただ妻子や飼馬をもつなど半俗生活を営んでいた。景戒は787年(延暦6)の霊異記初稿本を増補し,822年(弘仁13)頃に完成させたとみられる。795年(延暦14)伝灯住位を授けられた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…日本の説話文学集の創始とされる《日本霊異記(りよういき)》(822ころ)の撰述者。景戒に関してこれが唯一の資料である。因果応報の理の実在を確信し,中国の仏教説話集にならいながらも強い自国意識を失わず,善悪の現報をめぐる諸実例を全国的に集め,現世の行動の規範として人々を教化しようと撰述した。…
…〈にほんれいいき〉とも呼び,正式書名は《日本国現報善悪霊異記(にほんこくげんぽうぜんあくりよういき)》,通称《日本霊異記》,略して《霊異記》ともいう。奈良薬師寺の僧景戒(けいかい∥きようかい)撰述。成立は最終年紀の822年(弘仁13)以後まもないころ,ただし787年(延暦6)には原撰本が成るか。…
…〈にほんれいいき〉とも呼び,正式書名は《日本国現報善悪霊異記(にほんこくげんぽうぜんあくりよういき)》,通称《日本霊異記》,略して《霊異記》ともいう。奈良薬師寺の僧景戒(けいかい∥きようかい)撰述。成立は最終年紀の822年(弘仁13)以後まもないころ,ただし787年(延暦6)には原撰本が成るか。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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