浄衣(読み)じょうえ

精選版 日本国語大辞典 「浄衣」の意味・読み・例文・類語

じょう‐え ジャウ‥【浄衣】

〘名〙 (「え」は「衣」の呉音)
① 清浄な衣服総称神事祭祀法会などの参加者や、その際に用いる器物の製作者が着用する衣服を形状に関係なく総称していう。
正倉院文書‐天平二〇年(748)五月二六日・東大寺写経所解案「東大寺写経所解、申請浄衣料絁綿等事」
日本往生極楽記(983‐987頃)弘也「上人遷化之日。着浄衣香炉。向西方以端座」
② 素地(きじ)のままで色に染めない白い衣服。
※前田本枕(10C終)三〇〇「ただいみじくやつれて浄衣といふ名つけてきよきばかりをこそかごとにてあるものと知りたるに」
白布または白絹の狩衣。神事や祭事に着用するもの。明衣(めいい)
大鏡(12C前)六「八幡放生会には、御馬たてまつらせ給しを、御つかひなどにも浄衣をたまはせ」

じょう‐い ジャウ‥【浄衣】

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デジタル大辞泉 「浄衣」の意味・読み・例文・類語

じょう‐え〔ジヤウ‐〕【浄衣】

《清浄な衣服の意》
白布または生絹すずしで仕立てた狩衣かりぎぬ形の衣服。神事・祭祀さいしなどに着用。
僧が着る白い衣服。

じょう‐い〔ジヤウ‐〕【浄衣】

じょうえ(浄衣)

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改訂新版 世界大百科事典 「浄衣」の意味・わかりやすい解説

浄衣 (じょうえ)

8世紀段階での浄衣は,写経所における経師,校生,装潢(そうこう)等の写経に従事する職員,また仏工・木工等の造仏技術者,その補助的作業を行う自進,仕丁,駈使丁や廝女(かしわでめ),そして奴にいたるまでの階層に支給された衣服をいう。おそらく写経や造仏が宗教的作業と考えられたため,これに関連する仕事を行う者の衣服が,浄衣と称されたものらしい。おおむね盤領(あげくび)の衣(袍(ほう))と袴(はかま),女性の場合は裳(も)の組合せであるが,(あお),汗衫(かざみ),褌,冠,襪や被,前裳,早袖等を含める場合がある。絁(あしぎぬ)製と麻布製の2種があり,写経事業の中心的従事者には絁の浄衣が支給された。色は素地のほか,紅や赤黄色,また摺染(すりぞめ)を施したものがある。なお浄衣は,写経所内部で女性たちの手によって縫製され,貸与されたものらしい。返上された浄衣の洗濯も所内で行われたことが知られる。夏冬に応じて袷(あわせ)と単(ひとえ)の2種があったが,着替えの衣服支給はなく,1年間着つづけると,もはや着用に耐ええなかった。なお,平安期以降の浄衣は形も狩衣(かりぎぬ)形式へと変わり,神事等に従う際に,尊卑を分かたず一律に着用する衣服をいい,現代でも神官に用いられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「浄衣」の意味・わかりやすい解説

浄衣
じょうえ

(1)清浄な衣服の意で、祭祀(さいし)、法会(ほうえ)などのときに用いられる衣服。

(2)神事のときに着用する上着。白い絹か麻布で製した狩衣(かりぎぬ)形の衣服。この浄衣には括(くく)り袴(ばかま)が用いられ、狩袴と同じ六幅(むの)仕立てか四幅(よの)仕立ての袴が使われた。

[高田倭男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「浄衣」の意味・わかりやすい解説

浄衣
じょうえ

清浄なる衣服,つまり潔斎の服であり,神事や仏参のときに用いる。白色無文の狩衣 (かりぎぬ) と同じ作りで,布 (麻) でつくるのが常である。ただし上皇のものには生絹を用いた。

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普及版 字通 「浄衣」の読み・字形・画数・意味

【浄衣】じようえ

白衣。

字通「浄」の項目を見る

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