中国山東省南西部の都市。人口63万(2000)。泰山,魯山,蒙山等で構成される山東丘陵の西麓,泗水の谷口にあり,山東地方で最も早くから開発された地域。周代に魯国の都が置かれ,華北平原での政治,経済,文化の中心の一つであった。周との関係が緊密であったため,周文化の伝統を最も維持した古代の文化都市として知られる。漢代に魯県が置かれ,隋代に曲阜と改められた。大運河が開通してより,交通位置でまさる済寧が発達し,曲阜は一地方中心都市になった。しかし孔子の出生地,儒教の聖地として,孔子廟,孔府(衍聖公府),孔林(至聖林),顔回廟(復聖廟),周公廟(元聖廟)等の名跡があり,観光地として名高い。
執筆者:秋山 元秀
曲阜県城の北東郊に魯国の城址が存在する。1942,43年に,東亜文化協議会が中心となって,東京大学文学部考古学研究室・東亜考古学会が調査を行った。解放後は,山東省文物考古研究所・山東省博物館の手によって,77,78年に試掘とボーリング調査が大規模に行われている。《史記》周本紀によれば,周公が曲阜に封じられ魯と呼ばれたのは,西周の初年である。事実,曲阜からは,いくつかの西周墓が発見され,多くの西周青銅器が出土している。曲阜県城の北東に広がる魯城址は,版築の土城壁と城壁の外周を囲む城濠からなっている。この城は東城壁が2531m,南城壁が3250m,西城壁が2430m,北城壁が3560mの大きさで,城壁は基部で幅50m,高さ10mの規模を有している。城濠の幅は約30mほどで,深さは4~5mである。ボーリングによって11ヵ所の城門の存在が確認され,東,北,西に3門,南に2門が判明している。城内においては,大型建築址や,青銅鋳造工房,鉄器製造工房,骨器製造工房などの手工業址,住居址,墓地などの遺構が発見されている。
魯城の中央の周公廟付近に存在する大型建築址は,東西700m,南北400m,高さ10mほどの土台である。1942,43年の発掘調査の際,塼(せん)を敷いた宮殿址が発見され,また〈魯六年九月所造北陛〉の陰刻のある石材が出土している。城内出土の遺物としては,東周時代の鬲(れき),甑(そう),盆,甕,豆,鉢,盂などの陶器類,丸瓦,平瓦,瓦当,塼などの瓦塼類が発見されている。城内で発掘された129基の西周・東周墓は長方形竪穴墓で,木棺,木槨の存在が明らかな墓も多く,鼎,壺,簋(き),甗(げん),盤,盨(しゆ),匜(い)などの青銅器が副葬品として出土している。東周魯城の東南角には,漢代の魯城が存在する。この漢代城址は,東西約2500m,南北約1500mの大きさで,この区域からは,漢代の遺物の出土が多い。
執筆者:飯島 武次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中国、山東(さんとう)省中央部の南寄りに位置する県級市。済寧(さいねい)地級市に属する。人口63万9000(2014)。周代の魯(ろ)国の都、あるいは儒教の生みの親である孔子(こうし)の生地として古くから知られる。周代の初期に周公旦(たん)の子伯禽(はくきん)がこの地に封じられて、殷(いん)の旧勢力の影響が強い東方への備えとしたところから始まると伝えられるが、さだかではない。いずれにしても周公旦をその祖とし、周文化をもっともよく伝える魯国の国都として、春秋から戦国時代にかけては伝統文化の中心地であった。孔子が生きた激動の時代に、伝統文化の生んだ周代の文物、制度の再生を願って、彼が私塾を建てて講じたのもこの地である。戦国末、楚(そ)に滅ぼされ(前249)、秦(しん)代では薛(せつ)郡の治所、漢代は魯県となり魯王の治所であった。城の遺跡が現市街の南西部に存在する。隋(ずい)代から県名が曲阜となり清(しん)末に及んだ。
現在の市街は明(みん)代の建設によるが、京滬(けいこ)線が町の北西部を走る一農村都市で、おもに小麦、コウリャンを産する。その一方で中心部には孔廟(こうびょう)(孔子廟)や孔子の子孫の住居である孔府、北郊には一族の墓所の孔林などがあり、中国有数の歴史的観光都市の一つである。
[春日井明・編集部 2017年1月19日]
曲阜にある孔子ゆかりの史跡が1994年、ユネスコ(国連教育科学文化機関)により「曲阜の孔廟、孔林、孔府」として世界遺産の文化遺産に登録された(世界文化遺産)。
[編集部 2017年1月19日]
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