江戸幕府の職名。文庫および図書の出納・保管・修理の管理に当たる。1633年(寛永10)創設され1866年(慶応2)幕府解消までつづき,90名が任ぜられた。時代により異同があるが,人員4名,若年寄支配,焼火間詰,200俵高,役扶持七人扶持で,同心は4名から21名前後である。その記録(1706年以後)が内閣文庫に伝存され,《幕府書物方日記》(《大日本近世史料》所収)として刊行されている。江戸城の紅葉山文庫は初め林家ほかが適宜扱っていたが,奉行設置により逐次諸業務を管掌し,1712年(正徳2)には会所および3書庫が整備された。奉行の業務体制が固定されるのは1734年(享保19)ごろからで,曝書,書目改訂,書籍修補,書籍目録作成等の図書館業務や書誌学的作業のほかに,《明月記》欠本校正,《類聚国史》や《園太暦》や《日本後紀纂》の校正,《二条家日次記》筆写などの臨時の仕事にも当たった。《幕府書物方日記》のほかにその業務の大略は《図書府年譜》《御文庫始末記》によって知ることができる。またこの職には,下田師古,青木昆陽,桂山義樹,近藤守重(重蔵),鈴木白藤,高橋景保,林韑(復斎)などの学者も任命されている。
執筆者:山本 武夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…なお家康は江戸城内にも,1602年(慶長7),富士見亭文庫なるものをつくらせているが,のち場所を移して紅葉山(もみじやま)文庫となった。ここには書物奉行がおかれ,在任者には青木昆陽,近藤重蔵の名が見える。その蔵書は今日,一部は宮内庁書陵部,大部分は国立公文書館に移管されている。…
※「書物奉行」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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