旋律打楽器の一種。調律された木片を並べて打奏する。歴史は古く,16世紀には東ヨーロッパを旅する放浪楽師がよく使用した。その頃のものは膝の上にのせたり,紐で首からつり下げたり,わらを束ねた上にのせて奏するもの(ドイツ語で〈シュトローフィーデルStrohfiedel〉と呼ばれた)などがあった。1830年代の半ばにユダヤ系ポーランド人グジコフMichał Józef Guzikow(1806-37)がシュトローフィーデルでパガニーニらの作品をヨーロッパ主要都市で弾き注目された。同種の楽器は世界各地にあり,東南アジア,東アジアのものは,共鳴室である舟形の台に音板が並べられる。日本の歌舞伎の下座音楽などに用いられる〈木琴〉もこの型である。この〈木琴〉の名が,洋楽器ザイロフォーンxylophone(シロフォン)にも用いられた。ザイロフォーンはシュトローフィーデルなどから19世紀後半に現在の形に発達し,明治以後,日本に輸入された。
洋楽器の木琴は,鍵盤はホンジュラスローズウッドが使われ,長さ13~43cm,幅3.5~4.5cm,厚さ2.2~2.5cm,裏側はマリンバより浅いアーチ形,棒振動を応用して調律される。実音は記譜上よりオクターブ高く,残響時間は短い。音域はより3オクターブ半上まで。低音を広げたものもある。ピアノ鍵盤と同じ配置で枠の上にのせ,各鍵盤の下に共鳴管を取り付けてある。長さ33cmほどの柄の先に小さな硬質ゴムかプラスチック製の球をつけた桴(ばち)で奏する。管弦楽曲では骸骨の踊りを描いたサン・サーンスの交響詩《死の舞踏》(1874)が有名である。
執筆者:有賀 誠門
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
調律された木片を複数個並べ、一組として使う打奏楽器の総称。木片(音板)には硬質で乾燥した木が用いられ、木片の長さ、幅、厚みを変えることで音高を調節する。長く、幅広く、薄く削るほど音高は低くなる。音色は木片や桴(ばち)の材質によって変わり、桴の頭部には木やゴムなどの軟質材を用いる。もっとも簡単なつくりの木琴は、奏者のふとももの上に数本の木片を並べて打奏するものや、地面に掘った穴の上に丸太を並べて打奏するもので、アフリカに多くみられる。しかし、一般には木片は固定される場合が多い。東南アジアやアフリカに広くみられるのは、複数の木片を互いに紐(ひも)で結び合わせて外側の枠に固定する方法で、この方法によると木片の振動が妨げられにくく、よい音質が得られる。また枠の上に木片を直接置いて固定する方法もある。この場合は、木片と枠との接触部分にくふうがなされる。16世紀のヨーロッパの木琴は、藁(わら)を束ねた紐の上に木片を並べたのでシュトローフィーデルStrohfiedel(ドイツ語) とよばれた。現在の西洋音楽のザイロフォーン(シロホン)xylophoneも、半音階に3オクターブ半から4オクターブ並べた木片の下にフェルト製などのクッションを敷いている。
また、並んだ木片の下部には共鳴室がある場合が多い。アフリカのマリンバmarimba類や、西洋のザイロフォーンでは、各木片の下部に共鳴筒が取り付けてある。東南アジアや東アジアの木琴、19世紀に中国から伝来し歌舞伎(かぶき)の下座(げざ)音楽に使われる木琴などでは、舟型に組まれた箱が木片を支える枠と共鳴室の役割を果たしている。
[藤田隆則]
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…しかし人類が道具を用いるようになって以来,木や骨による〈打ちもの〉,乾燥した木の実などによる〈がらがら〉を知っていたことは十分考えられる。旧石器時代になると,ブル・ロアラー(うなり木),法螺(ほら)貝および笛が現れ,新石器時代にはスリット・ドラム,一面太鼓,楽弓,パンの笛(パンパイプ),横笛,木琴,ジューズ・ハープ(口琴),葦笛など,豊富な種類の楽器が作られるようになった。さらに金属を用いるようになると,鐘やチター系弦楽器が現れる。…
※「木琴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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