サン・サーンス(読み)さんさーんす(英語表記)Camille Saint-Saëns

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サン・サーンス」の意味・わかりやすい解説

サン・サーンス
さんさーんす
Camille Saint-Saëns
(1835―1921)

フランスの作曲家、ピアノ奏者、オルガン奏者。パリに生まれる。10歳でピアノ奏者としてデビュー、神童ぶりを発揮、のちにパリ音楽院で、オルガンをブノア、作曲をアレビーに学んだ。18歳でパリのサン・メリー教会のオルガン奏者に就任、同年、交響曲第1番が初演されグノー賞賛を受けた。1857年マドレーヌ教会のオルガン奏者になり、この教会で彼の即興演奏を聴いたリストは「今日の最高のオルガン奏者」と激賞した。一方、サン・サーンスはしだいに作曲に力を注ぎ、67年にはカンタータ『プロメテの結婚』が万国博覧会記念コンクールに入賞するなど、作曲家としての地位を確立していった。また、当時のフランスに優れた器楽作品がほとんどないことを痛感し、若い作曲家に器楽や室内楽作品の発表の場を与えるため、71年ビュシーヌとともに国民音楽協会を設立、フランク、フォーレ、ラロらがこの協会に加わった。彼は86年まで同協会の指導的地位にあり、その間、自らも作品を発表した。晩年は作曲活動のかたわら、アメリカから東洋まで旅行をして回ったが、北アフリカのアルジェが気に入り、1921年12月パリの寒さを避けてふたたび訪れたこの地で86歳の生涯を閉じた。

 彼はあらゆるジャンルにわたって多くの作品を残したが、オペラ主流の当時のフランス音楽界の情況を映し、とくにオペラに力を注いだ。しかし今日『サムソンデリラ』(1877初演)を除いてはあまり上演されていない。むしろ管弦楽曲、協奏曲に優れた作品が多く、オルガンを加えた交響曲第3番(1886)、5曲のピアノ協奏曲、3曲のバイオリンと管弦楽のための協奏曲、同じくバイオリンと管弦楽の『序奏とロンド・カプリチオーソ』(1863)、交響詩『死の舞踏』(1874)などは、いまも広く親しまれている。また当初は12の楽器のために書かれ、有名な「白鳥」を含む描写的な作品『動物の謝肉祭』(1886。のちに管弦楽用に編曲)は、彼の死後人気を博した。彼の作品は革新的であるよりは古典的な形式感や節度を重んじたものであるが、同時に繊細で優雅な表現、色彩的感覚に優れ、またとくに協奏的作品においては名技性を存分に取り入れてもいる。

[美山良夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サン・サーンス」の意味・わかりやすい解説

サン=サーンス
Saint-Saëns, (Charles-)Camille

[生]1835.10.9. パリ
[没]1921.12.16. アルジェ
フランス近代の作曲家。幼少時から神童ぶりを発揮,パリ国立音楽院で学んだのち,サン・メリー聖堂,聖マドレーヌ聖堂のオルガニストをつとめた。4年間の教職ののち,代表作『サムソンとデリラ』 (1877) をはじめオペラ作曲に励む一方,近代フランス器楽の発展を目指し,「国民音楽協会」を創設,また多くの管弦楽や室内楽を作曲した。オルガンやピアノの名演奏家としても成功を収め,フランス音楽界を代表する存在となったが,晩年は広く海外に旅行し,アルジェで客死した。主要作品は交響詩『死の舞踏』『動物の謝肉祭』『第3交響曲』,5つの『ピアノ協奏曲』など。

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