本位貨幣(または正貨)との兌換が保証されている銀行券のことで、正式には兌換銀行券という。兌換の約束のない不換銀行券に対比される。銀行券は本来、兌換券であり、その保有者に対して、要求ありしだい額面の貨幣を支払うという銀行の債務証書である。これが流通するようになったことから信用貨幣ともいわれる。発行銀行は、兌換準備金を保有しなければならないが、信用創造によって兌換準備以上の銀行券を発行することができる。しかし、兌換券は、兌換によってその紙幣価値が一定されており、商品取引や債務の決済の必要によってその流通も規制されているので、銀行が任意に発券を拡張することはできない。かつてはどの銀行も兌換券を発行していたが、券面金額の統一化、小額化とともに、中央銀行による発券の集中・独占化、および中央銀行券への法貨資格の付与によって、兌換券は中央銀行券に統一され、いわば現金化するに至った。日本銀行券は、1885年(明治18)の発行開始から1931年(昭和6)まで兌換券であり、当初は銀貨兌換、1897年以降は金貨兌換であった(ただし、第一次世界大戦の影響で1917年(大正6)9月から30年1月までは金本位制が停止され、金貨兌換は行われなかった)。
[齊藤 正]
本位貨幣(または正貨)との兌換が保証されている銀行券,正しくは兌換銀行券といい,兌換が停止された不換銀行券に対立する用語。政府紙幣も金貨兌換の約束で発行された場合もあったが,結果的に兌換が行われた場合はきわめて少なく,兌換券には政府紙幣を含めないのが通説である。兌換銀行券は金貨本位制下の中央銀行によって発行され,金貨との自由兌換が保証されることによって金貨に代わって流通し,金貨本位制の機能を維持していた。金貨の流通が停止された金地金本位制や金為替本位制では,国内流通の銀行券は金兌換が禁止され不換銀行券となるが,中央銀行は対外決済に対して金地金の兌換に応じ,あるいは他の金本位制国あての為替手形の売買に応じることによって,いずれも対外的に金本位制度の機能を維持してきた。日本で兌換銀行券の名称は,1882年の日本銀行条例14条と84年の兌換銀行券条例に始まる。当初は銀貨兌換であったが,97年の貨幣法によって金貨兌換に改められた。金本位制度は第1次大戦中の1917年に停止され,30年1月の金輸出解禁によって再開,銀行券の金貨兌換も始まったが,翌31年12月再禁止された。42年の日本銀行法の改正とともに兌換銀行券条例は廃止され,銀行券の名称も日本銀行券と改められた。
執筆者:石田 定夫
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…また同法3条によって20円,10円,5円の3種類の金貨が鋳造されたが,1931年金本位制が停止されて以来,金貨の発行は行われていない。金貨は日常の支払手段として使うには不便であり,しかも流通過程で摩損するので,国家は金貨と兌換(だかん)できる銀行券(兌換券)を中央銀行に発行させることによって,金本位制のシステムを維持していた。金本位制のなかでも,金貨ないし兌換券が流通する金貨本位制下における金貨が最も典型的な本位貨幣であるが,金貨が流通していない金地金本位制や金為替本位制においても,金が価値尺度機能を営んでいる以上,中央銀行保有の金貨は本位貨幣であるといえる。…
※「兌換券」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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