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管理通貨制度 かんりつうかせいどmanaged currency system

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

管理通貨制度
かんりつうかせいど
managed currency system

一国の通貨量を金保有量の増減に直接的にリンクさせることなく,金融政策の目標の実現を通貨管理当局の自由な裁量によって調節する制度。第1次世界大戦前は,通貨価値の安定をはかるために通貨と金の兌換を保証する金本位制度が基本となっていた。しかし金本位制度は為替相場の安定という対外均衡の確保を最大の目的とし,対内均衡を犠牲にしがちであった。 1929年の世界恐慌以後,多くの国が金本位制度を廃してこの制度を採用。日本では 32年の兌換銀行券発行制度の改正により実質的にこの制度へ移行し,42年の日本銀行法の制定で,法制上も移行を果した。

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デジタル大辞泉の解説

かんりつうか‐せいど〔クワンリツウクワ‐〕【管理通貨制度】

国内通貨の供給量を正貨準備量によって増減するのではなく、通貨当局が政策的に管理・調節する制度。

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百科事典マイペディアの解説

管理通貨制度【かんりつうかせいど】

1930年代初頭までは各国で金本位制度が行われ,貨幣の価値は金の価値によって定まっていたが,金本位制度放棄後は通貨は不換紙幣となり,その価値は不安定となった。通貨を政策的に管理して物価を安定させるような通貨制度が望ましいとされ,各国の金融政策となった。
→関連項目インフレーション銀行券高橋財政本位制度

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世界大百科事典 第2版の解説

かんりつうかせいど【管理通貨制度】

一般に通貨当局が物価安定・経済成長・完全雇用の達成などの政策目標に即して通貨(銀行券)発行高を政策的に操作・調節できる制度をいい,正貨(金)準備の増減によって銀行券発行高が拘束される金本位制度と対比される。19世紀に確立された国際的な金本位制は第1次大戦によって中断されたが,1919年にアメリカ,25年にイギリスがそれぞれ金本位制に復帰した。しかしこの間,アメリカ,フランスに金が集中し世界的に金の偏在が生じた。

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大辞林 第三版の解説

かんりつうかせいど【管理通貨制度】

国内通貨量を正貨準備(金)の量によって決定する金本位制に対し、通貨当局が政策目標に従って通貨量を人為的に調節する制度。通貨の発行が比較的容易なため、増発からインフレーションを招きやすい。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

管理通貨制度
かんりつうかせいど
managed currency system英語
manipulierte Whrungドイツ語
systme de la monnaie dirigeフランス語

国内通貨量と中央銀行の金準備との関係を断つ、すなわち、銀行券の兌換(だかん)を停止し、不換紙幣化することを制度的前提に、国内通貨・信用量の裁量的な操作を通じて景気変動に対処し、資本主義体制の安定と経済成長の促進を図ろうとする政策体系・制度をいう。
 1929年の大恐慌を契機に国家の経済過程への大規模な介入が開始されるが、その主要なてことなるのが管理通貨制度である。すなわち、資本主義経済が自律的な均衡の回復機能を喪失したことから、政府の有効需要創出を通じて過剰資本と過剰労働力を結合させ、完全雇用を達成し、景気の回復を図ろうとする政策の制度的支柱として位置づけられる。その際とられる財政・金融政策は、総じて追加的信用による投資資金の供給、完全雇用の達成を通じて経済の安定を目ざそうとするものであるが、兌換停止下では必然的にインフレーションを随伴することになる。しかし、過度のインフレーションは不公平な所得の再配分により逆に経済の不安定性を激化させることから、通貨価値の維持が要請されることとなる。一方における追加的信用の供給と他方における通貨価値の維持、この両者の矛盾を緩和することが中央銀行による金融政策運営の基本となるのである。
 このように、通貨供給が正貨準備に結び付けられ、対内的には法定平価での金兌換、対外的には法定為替(かわせ)相場の維持を目的として行われた金本位制度下の通貨管理とは違い、管理通貨制度下では国内の景気対策上の要請による有効需要の管理を目的として通貨管理が行われることになる。金本位制度が対外均衡優先であるのに対し、管理通貨制度が国内均衡優先であるといわれるゆえんである。[齊藤 正]

成立

1929年の世界的大恐慌とそれに続く1930年代の金融恐慌のなかで、各国は銀行券の兌換停止、金の自由輸出入の禁止という緊急措置をとり、いわゆる再建金本位制度は短命に終わる。これ以後、銀行券の発行高は金準備に制約されることなく、通貨当局の裁量にゆだねられることになるが、金本位制度への復帰に強く反対し、それにかわる通貨制度として管理通貨制度の採用を主張した代表的論者がJ・M・ケインズであった。ケインズは「供給は自ら需要を創(つく)る」という、それまでの支配的見解(セーの法則)を否定し、不況、したがって失業の原因を需要の不足に求めた。そして、需要の不足は、貨幣の供給を金という増加させにくい自然物に結び付けているためだとして、金を事実上、入手が困難な「月」になぞらえ、人々が「月」を欲するから失業が生じると述べている。そこで、潜在的な生産能力を稼働させるためには、増加可能な財生産の供給に見合うように通貨の発行量を人間の知性によってコントロールすべきだと主張して、一国の好景気、失業の減少が近隣窮乏化政策のうえでのみ実現される金本位制度にかわる、国内均衡を重視した伸縮的な財政金融政策の必要性を説いたのである。ケインズの主張は、自律的な均衡回復機能を失った資本主義経済に、国家の経済過程への介入という活路を提供することとなった。
 1930年代にとられた不況対策は、各国の実態に応じて多様であった(たとえば、アメリカのニューディール政策、ドイツのナチズム経済政策、日本の高橋財政など)。しかし総じてそれらは、ブロック経済を指向するなかで国内経済の再建を図るというものであり、戦争経済との関連において生産が拡大し、景気が回復するというものであり、それ自体として成功したのではなかった。
 世界経済の再建を前提とする管理通貨制度は、第二次世界大戦後のIMF(国際通貨基金)体制をもって確立する。すなわち、各国における管理通貨制度の採用を基礎に、アメリカ財務省によるドルに対する金兌換規定と、IMF加盟国の対ドル・レートを維持するための公的介入のルールの創出によって整備された世界的な規模での管理通貨制度が完成する。このようなアメリカの主導による世界的規模での管理通貨体制=IMF体制の下で、各国は財政政策と金融政策を一体化した財政金融政策を採用することになるのである。[齊藤 正]

管理通貨制度の展開と新たな問題

管理通貨制度は第二次世界大戦後の高度経済成長を実現するのに寄与した一方、新たな問題を生み出すことになった。その一つは、ドルに対する国際的信認の低下による国際通貨不安の頻発であり、いま一つは、スタグフレーションといわれる不況とインフレーションの同時進行状況であった。管理通貨制度は、国際的な通貨協力体制を前提としてその機能を十全に発揮しうるものであり、かつ、そもそも不況からの脱出(=経済成長)を目的として金準備と国内通貨量との連関を断ったのである。この二つの基本前提自体が深刻な動揺をきたしているなかで、1971年8月のニクソン声明によってドルと金との兌換が停止され(ニクソン・ショック、ドル・ショック)、1973年国際通貨制度は固定為替相場制から変動為替相場制へ移行した。また、国内的にも政治的プレッシャーによる「大きな政府」への志向がインフレーションの高進や財政赤字の深刻化をもたらし、1980年代以後、アメリカのレーガン政権、イギリスのサッチャー政権、日本の中曽根(なかそね)内閣など、新自由主義的な「小さな政府」を掲げる保守的政権の登場を促すこととなった。[齊藤 正]
『大内力著『国家独占資本主義』(1970・東京大学出版会) ▽川合一郎著『管理通貨と金融資本』(1974・有斐閣) ▽侘美光彦著『国際通貨体制』(1976・東京大学出版会) ▽中内恒夫訳『ケインズ全集4 貨幣改革論』、塩野谷祐一訳『ケインズ全集7 雇用・利子および貨幣の一般理論』(1978、1983・東洋経済新報社) ▽建部正義著『管理通貨制度と現代』(1980・新評論) ▽深町郁弥著『現代資本主義と国際通貨』(1981・岩波書店)』

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世界大百科事典内の管理通貨制度の言及

【ケインズ】より

…23年には自由党の機関誌《ネーション》の会長となり,その後は《ネーション》やその後身の《ニュー・ステーツマン・アンド・ネーション》その他に数多くの時論を発表して啓蒙に努めた。 第1次大戦後のイギリス経済の停滞に際して金本位制への復帰を望む声が強まったが,ケインズは,金本位制とくに旧平価による金本位制への復帰と自由放任主義に反対して管理通貨制度の必要性を提唱,《貨幣改革論》(1923)や《チャーチル氏の経済的帰結》(1925,小冊子)を発表するにいたった。このケインズの主張は,日本における昭和初年の金解禁をめぐる論争にも影響を与え,石橋湛山,高橋亀吉ら旧平価解禁反対論者の反対の根拠とされた。…

【資本主義】より

…ドイツではナチス政権が登場し,赤字財政による軍事生産の拡大と経済の統制によって経済の回復をはかったが,経済圏拡大の試みによって国際対立が激化し,第2次大戦がひきおこされることになった。 金本位制を停止して管理通貨制度を採用することは,通貨の量を金保有高によって限度づけるのをやめ,政策的に増減させることを可能にして,財政・金融政策をつうじての政府の経済介入の余地を大きく広げ,景気の回復・維持のための積極的政策の展開を容易にした。管理通貨制は,経済活動の調整を市場経済の自律的メカニズムにゆだねるのではなく,市場メカニズムを利用しながらも経済を政治的・経済的目標にしたがってある程度人為的に調整していこうとすることを意味する。…

※「管理通貨制度」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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