出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
江戸前期に著されたわが国最初の本格的画論・画史書。全六冊。狩野山雪(かのうさんせつ)の遺稿をもとに、その子永納(えいのう)(1634―1700)が黒川道祐(どうゆう)の援助を得て、増補を加えて完成させた。初めに画原、画官、画考、画運、画式、画題について概説し、次に405人に及ぶ古代から当代に至る画家の小伝を記し、最後に諸家の印影を集めた「本朝画印」を付す。1678年(延宝6)の林鵞峰(はやしがほう)の序文を載せ、91年(元禄4)『本朝画伝』の書名で刊行したが、翌々年に『本朝画史』と改めた。1819年(文政2)には江戸の鑑定家檜山坦斎(ひやまたんさい)によって『続本朝画史』が出版されている。編纂(へんさん)の基本姿勢として狩野派の正統性を強く主張しながら総合的な画家伝となっている。また本書は、数少ない体系的な日本美術史の著述として貴重であり、その多岐にわたる内容は、近世初期以前の絵画を研究するうえで、今日においても重要な文献である。
[玉蟲玲子]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…それが17世紀後半から行われる画史の編纂である。 最初の画史といわれる《丹青若木集》は光信の門人とされる狩野一渓(1599‐1662)の手になるものであり,京狩野の狩野永納は《本朝画史》(1693)を完成させている。とくに《本朝画史》は,狩野派はやまと絵と漢画の両者を総合したものという見方に立って編集されている。…
…また《画工便覧》(1673ころ)は,《丹青若木集》の増補版というべき性質のものである。これらに続いて,狩野永納が編んだ《本朝画史》は,史観をともなった本格的な日本絵画論・絵画史として画期的なものである。狩野安信の《画道要訣》(1680),土佐光起の《本朝画法大伝》(1690)は,ともに秘伝として門人に与えられたものであり,内容には宋・元の諸画論の巧みな翻案が見られる。…
…障屛画制作に対する狩野派の指導理念は,やがて17世紀の末に狩野永納がその著書において明らかにする。すなわち,《本朝画史》に示された障屛画制作の方式では,城郭御殿において多様化した生活空間の機能に画題や技法をみごとに対応させて整合的にとらえる。居住空間としての奥向きでの私的な生活の場には山水を水墨で描き,公式対面の接客空間には人物画を彩色で表し,人々が集まり歓談する大広間には花鳥を,さらに廊下など庇(ひさし)の間には走獣を濃彩でもって華やかに表現すべきだという。…
※「本朝画史」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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