屋根を木材の板で葺くことをいい,日本建築では板の寸法,形状,葺き方によって,杮(こけら)葺き,木賊(とくさ)葺き,栩(とち)葺き,長板葺き,木瓦葺き,石置き板葺きなどがある。杮葺きは木羽(こば)葺きともいい,長さ30cm前後,厚さ3mm前後のサワラやスギの手割り板を竹釘を使って細かく(3cm前後の葺き足)葺くもので,板葺きの中では最も高級で品が良い。中世以降社寺建築や書院,客殿に用いられ,代表的な例として桂離宮の書院があげられる。栩葺きは厚さ9mm前後の板を葺くもので,杮葺きよりは素朴であり山間や地方の社寺建築にみられる。杮葺きと栩葺きの中間ぐらいの厚さの板を葺くものを木賊葺きというが,杮葺き・木賊葺き・栩葺きの境界は明確でない。長板を縦に葺く長板葺きには,薄板を屋根面のたるみに合わせて葺く流し板葺き,厚板を2段,3段にこう配を変えて葺く厚板段葺き,板の合せ目に目板を打つ目板葺きなどさまざまな葺き方があり,地方によっては呼名も違う。長板葺きは小規模な神社本殿などに例が多い。木瓦葺きは本瓦葺きの形を長板で平と丸別々に造って葺くもので,中尊寺金色堂はその例。石置き板葺きは長さ60~90cmの薄板を敷き並べ,石を置いて押さえるもので,北日本の民家に多くみられる。板葺きは古くから用いられており,《日本書紀》には〈飛鳥板蓋宮〉が642年に造営されたと記されている。中世以降の町家でも,京では桃山時代まで,江戸では江戸時代初期までほとんどが流し板葺きや石置き板葺きであった。
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執筆者:浜島 正士
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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