東京外国為替市場(読み)とうきょうがいこくかわせしじょう

改訂新版 世界大百科事典 「東京外国為替市場」の意味・わかりやすい解説

東京外国為替市場 (とうきょうがいこくかわせしじょう)

外国為替市場広義に解すると,銀行とその顧客との間の外国為替取引を含めて広く外国為替取引が行われる場を意味するが,通常はより狭義に,銀行間interbank為替取引が行われる市場を外国為替市場といい,東京外国為替市場という言葉もこのような意味で用いられる。日本においては,東京のほか大阪や名古屋でも銀行間為替取引が行われるが,そこでの取引は少ない。

 銀行間市場としての東京外国為替市場は,外国為替銀行外国為替ブローカーおよび通貨当局(財務省日本銀行)から構成される。まず外国為替銀行とは,かつては外国為替公認銀行制度の下で外国為替銀行法に基づく外国為替専門銀行(1996年三菱銀行と合併する以前の東京銀行1行のみ)と外国為替及び外国貿易管理法(外為法)に基づき外国為替業務の認可を受けた外国為替公認銀行を指したが,1998年4月改正外為法の施行により外国為替公認銀行の制度はなくなり,機能的に外国為替業務を行う金融機関などをいう。次に外国為替ブローカーは,外国為替公認銀行間の取引の出合いを容易にする役割を担っており,その仲介によって銀行間取引が成立すると売手買手双方から仲介手数料を受け取る。しかしブローカーは自己の勘定外貨を保有・売買することは認められていない。東京外国為替市場における銀行間取引は,このブローカー経由取引と銀行間直接取引があり,電子的自動ディーリング・システムの導入後,後者比重が高まっている。第3の市場構成者である通貨当局は,円相場の変動を和らげるため市場の一当事者となって外国為替取引を行う。このような通貨当局による取引は平衡介入と呼ばれ,大蔵大臣が管理する外国為替資金特別会計資金が用いられるが,その実務は事務委任を受けた日本銀行が行っている。このような東京外国為替市場で取引される外貨は,円を対価とする米ドル(ドル・円取引)が圧倒的シェアを有し,その他の外貨取引は米ドル対価で行われ,この種取引はクロス取引と呼ばれる。

 市場取引には,直物取引,先物取引およびスワップ取引の3種類がある。直物取引は,資金の受渡しが取引約定日の当日または2営業日以内に行われるものをいうが,実際の取引は2営業日渡しが中心である。先物取引(アウトライト先物取引とも呼ばれる)は,通常,直物取引の受渡し日を起算日とする各月の応当日を受渡し日とする取引である。たとえば8月15日に3ヵ月の円・ドル先物取引が成立した場合,その資金の受渡し日は起算日である8月17日の3ヵ月先の応当日である11月17日となる。スワップ取引とは,同一金額でかつ逆方向の直物取引と先物取引を同時に行う取引(直・先スワップ取引)をいう。前述のアウトライト先物取引は原理的には,直物取引と直・先スワップ取引を組み合わせることによって行われる。また受渡し日が異なる逆方向の先物取引を同時に行う先・先スワップ取引もある。近年,日本の対外資本取引が大幅に自由化されたことに伴い,先物カバー(〈為替ヘッジ〉の項参照)付きの米ドル建短期資金取引が増大したことなどを反映して,東京外国為替市場におけるスワップ取引の比重が高まっている。

 東京外国為替市場において午前10時ころ成り立つ円・ドル取引の銀行間相場は,通常1日に1回建値される銀行の対顧客相場の基準となる。なお,東京外国為替市場は,ニューヨークやロンドンの各外国為替市場などと同様に,証券市場における証券取引所のような特定の物理的場所をもたず,市場構成者間の電話・電子的媒体(コンピューター)網で結びついた市場である。
外国為替市場
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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