秀松軒編の歌謡書。1703年(元禄16)刊。編者の伝記は未詳であるが,第2巻の〈長歌〉の中の月見,夏草,花見の3章が,流石庵羽積(さすがあんはづみ)著《歌系図》(1781刊)に秀松軒作詞とあるのによれば,音曲や俳諧に遊んだ市井の一粋士か。書名の由来については巻頭の序に〈秀松軒の木のもとにかきあつめぬれば松の葉と名づけぬるもむべなるべし〉とある。近世前期における上方の三味線歌謡を集成した最初の書で,巻頭に三味線発達の由来を記した序があり,各巻首に目録を掲げる。第1巻は本手(ほんて),葉手(はで),裏組の〈組歌〉21曲と,〈秘曲相伝之次第〉。第2巻は〈長歌〉50曲で,目録に作者名がある。第3巻は〈端歌〉で,本調子,二上り,三下り,〈騒ぎ〉など73曲。第4巻は半太夫節以下の〈吾妻浄瑠璃〉21曲。第5巻は〈古今百首投節(なげぶし)〉で,巻末に〈歌音声幷三味線弾方心得〉と,跋文がある。近世歌謡の宝典ともいうべき貴重な資料である。
執筆者:浅野 建二
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江戸初期に成立した歌謡書。五巻。1703年(元禄16)京都刊。秀松軒(しゅうしょうけん)編。編者の伝記など未詳だが、書名が編者の名にちなんだことが序文に記されている。上方(かみがた)において職業的演奏家(盲人演奏家)によって伝承されてきた近世初期三味線歌曲の歌詞を集成した最初のもので、歌謡史、日本音楽史上貴重な書。第一巻―三味線組歌21曲および「秘曲相伝之次第」、第二巻―長歌(ながうた)50曲、第三巻―端歌(はうた)73曲、第四巻―半太夫節(はんだゆうぶし)などの吾妻浄瑠璃(あづまじょうるり)21曲、第五巻―古今百首なげぶし(投節)と「哥音声并三味線弾方心得(うたおんせいならびにさみせんひきかたこころえ)」よりなる。翌04年(宝永1)には、本書の補遺的性格をもつ大木扇徳(せんとく)編『落葉(おちば)集』七巻が刊行され、主として劇場歌謡、踊歌、流行唄(はやりうた)の歌詞が絵入りで収録されている。
[茂手木潔子]
『浅野健二校注『松の葉』(『日本古典文学大系44 中世近世歌謡集』所収・1959・岩波書店)』
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[近世]
現在民謡と呼ばれる歌の99%は,近世つまり江戸時代の所産である。この期の民謡の歌詞は,都会地流行の歌謡とともに,《糸竹初心集》《淋敷座之慰(さびしきざのなぐさみ)》《大ぬさ》《松の葉》などに収められ,《大ぬさ》《糸竹初心集》には楽譜も記されている。しかし,純粋な民謡を集めたものとしては,《山家鳥虫歌》《鄙迺一曲(ひなのひとふし)》,鹿持雅澄(かもちまさずみ)編の《巷謡編》(1835)などが有名である。…
…元禄年間(1688‐1704)には《参会名護屋(さんかいなごや)》でも踊られた。なお,1703年刊の《松の葉》にも長歌の《春駒》が市川検校の作として収載されている。(3)郷土玩具。…
…貞享・元禄(1684‐1704)のころに流行した。《松の葉》(1703),《若緑》(1706),《松の落葉》(1710)などによると,当時上方では,江戸を代表する浄瑠璃として,盛んに演奏されており,肥前節(江戸肥前掾),河東節とともに江戸節ともいわれた。その曲節は主として弟子の初世十寸見河東(ますみかとう)をへて河東節に伝わったが,その他の三味線音楽にも〈江戸〉または〈江戸がかり〉として,優雅で淡泊な雰囲気を出すときに使われている。…
※「松の葉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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