カイコを飼育するためのクワを植え付けた畑。桑畑(くわばたけ)ともいう。クワは永年性作物であるので,植え付けた後は10年以上にわたって毎年ほぼ均一な収穫をあげねばならない。そのためにはカイコの飼育に応じた用途別の桑園をつくる必要がある。カイコの飼育時期別には春蚕専用桑園,春秋蚕兼用桑園,夏秋蚕専用桑園などにわけられる。春秋蚕兼用桑園は春と秋の2回収穫する一般的な桑園であるが,地域によりまた飼育回数の増加により,兼用桑園のほかに専用桑園をつくる傾向が広まっている。カイコの齢期別には稚蚕用桑園と壮蚕用桑園に分けられるが,カイコの稚蚕期には良質の桑葉を必要とするので,施肥の種類と量にはとくに留意しなければならない。稚蚕共同飼育所には専用の稚蚕用桑園をもっているところが多い。個別農家の桑園は分散していることが多く,管理や収穫に不便であるばかりでなく,農薬の被害を受けることも多いので,山林などを開墾して大規模な集団桑園が各地につくられている。日本の桑園面積は約2万6300ha(1995)であり,漸減の傾向にあるが,山間地帯では畑作物として重要な位置を占めている。枝を剪定(せんてい)する刈桑仕立てには主幹の高さにより根刈仕立て,中刈仕立て,高刈仕立てに区分されているが,10aあたりの植付け本数は根刈仕立ての桑園では800本から1000本,中刈仕立てでは400本から600本である。近年,10aあたりの収繭量の増加と機械利用による条桑収穫労力の節減のため,10aあたり2000本から3000本を植え付ける密植機械化桑園の造成が行われている。また,沖縄など亜熱帯地域にも養蚕が導入されており,こんごも社会経済的な情勢の変化により,桑園立地の異動は続くものと思われる。
→クワ
執筆者:間 和夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
養蚕のためにクワを栽培する畑。養蚕の時期別あるいはカイコの齢(れい)に応じてクワをとる畑が異なり、これを用途別桑園という。すなわち春秋蚕(しゅんじゅうさん)兼用桑園は春と秋の二蚕期用のクワをとるもので、春蚕用には春の萌芽(ほうが)を収穫し、その後切り戻して以降に伸び出す枝葉を秋蚕用に使う。全国にもっとも一般的な桑園で、山陰地方以外の西日本ではこの桑園だけで1年の養蚕を行っている。春蚕専用桑園は春蚕期のみに葉をとり、夏以降は放置するもので、生育期の短い多雪地でつくられる。夏秋蚕専用桑園は春の発芽以前に枝を切り戻し、夏秋蚕の時期にのみ葉をとる。蚕齢別には稚蚕用と壮蚕用とがある。稚蚕用桑園は葉質の軟らかい若葉をとるもの、壮蚕用桑園は4、5齢期のカイコに与えるための大きく育った葉をとるもので、収量が多いことを必要とする。このためそれぞれクワの栽植密度や管理方法を異にする。
桑園は日照・通風のよい肥沃(ひよく)な平坦(へいたん)地が適地だが、クワは山地のやせ地にもよく育つ。湿地には適さない。近年は桑園が山間地に集団でつくられている。クワは苗を定植して2、3年目から葉を収穫する。この間に毎年枝を刈って株の骨格づくりをする仕立てを行う。仕立ての刈り高により0.4メートルの根刈り、0.5~1.5メートルの中刈り、1.5メートル以上の高刈り桑園の3種に大別される。普通は根刈り仕立てで、高刈りは積雪地帯で行う。
[星川清親]
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