建物の由緒,工事年月日,建築主(施主),工事担当者(工匠)などを書き,棟上式(むねあげしき)で棟木(むなぎ)に打ちつける札。修・改築の際に入れることもある。多くは木製だが,銅製,瓦製もある。〈むねふだ〉〈とうさつ〉ともいい,建物の歴史を知る最良の資料である。棟木に打ちつけず,屋根裏に納めることもある。古くは長い矩形のものもあるが,上部を山形にし,大きな将棋の駒のような形とするものが多い。中尊寺の1122年(保安3)のものが現存最古のものであるが,文字が不明瞭である。文字の明確なものでは,東大寺法華堂の〈正治元年(1199)八月八日〉の年月日と〈木工大工権守国宗〉の工匠名などがある棟札が古い。札ではなく棟木や梁に直接書くこともあり,これを棟木銘,棟木墨書と呼ぶ。中尊寺金色堂の〈天治元年(1124)〉と書かれたものが最古の例である。
執筆者:西 和夫
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建築物の創建または修理に際して、その事実を木札などに記して棟や梁(はり)に打ち付けた記録である。その多くは建造の年月日、建築主、工匠の名前などを記す。家の守護神の名を記したり、呪文(じゅもん)を記したものもある。一般に薄く細長い板で、頭部は多く山形をなし、呪物などとともに箱に入れる場合もある。同じような記録は棟や梁などに直接記される棟木銘にもみられ、これが棟札の起源であるといわれている。現存する古い例としては、岩手県・中尊寺蔵の棟札(保安(ほうあん)3年〈1122〉)、同金色堂の棟木銘(天治(てんじ)元年〈1124〉)、また奈良・東大寺三月堂礼堂の棟札(正治(しょうじ)元年〈1199〉)がある。民家では奈良県五條(ごじょう)市五條の栗山(くりやま)家が慶長(けいちょう)12年(1607)の棟札を残し、現存する最古の町屋とされている。
[神野善治]
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建物の建立や修理の際,上棟(じょうとう)の年月日,工事関係者の氏名などを書いて残す板札。はじめは棟木の下面に直接書くか別の板に書いてうちつけたが,のち小屋束(こやづか)などにうちつけたり箱に格納したりした。形や書かれた内容はさまざまで,一般に古くは幅が狭くて長く内容は簡単だったが,しだいに幅が広くなって下方がせばまったものもあり,建物の由緒や工事の内容なども細かく記すようになる。1122年(保安3)の中尊寺経蔵棟札が最古の遺品。
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…中尊寺の1122年(保安3)のものが現存最古のものであるが,文字が不明瞭である。文字の明確なものでは,東大寺法華堂の〈正治元年(1199)八月八日〉の年月日と〈木工大工権守国宗〉の工匠名などがある棟札が古い。札ではなく棟木や梁に直接書くこともあり,これを棟木銘,棟木墨書と呼ぶ。…
※「棟札」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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