口から言葉を出すときにその要素である音を発することを構音というが,この構音の異常をいう。しかし,同じ話し言葉の障害でも,失語症による障害は構音障害から除くのが慣例となっている。構音障害は機能的構音障害と器質的構音障害に大別される。機能的構音障害は,現在までのところ,原因となる器質的な異常がみられないもので,構音の技術が未発達であったり,拙劣で,いくつかの音の誤りが固定化した状態をいう。たとえば,サ行をタ行に置き換えて発音する子どもなどはこれに属する。器質的構音障害は器質的な異常がはっきり認められるもので,次の二つに分類される。一つは,口,舌,軟口蓋,咽頭,喉頭など構音の際に使われる器官の形や位置の異常によって生ずるものである。口蓋裂などがこれに属する。もう一つは,構音に使われる筋肉の麻痺,協調運動障害,筋緊張異常,異常運動などで生ずる構音障害である。
舌筋の麻痺では,サ行,タ行,ナ行,ラ行などの舌音の障害が生ずる。軟口蓋麻痺では鼻声となる。口の筋肉の麻痺では,パ行,マ行などの口唇音の障害が生ずる。構音筋の共同運動障害では,話し方が遅くしかも不規則となる。言葉が子音ごとに分離することや,話始めが爆発的になることもある。構音筋の緊張亢進があると,抑揚のない単調な話し方となる。異常運動で生ずる構音障害には,舞踏病などにみられる,音のひずみを伴う声の高さと強さの不規則な変化などがある。
→失語症
執筆者:杉下 守弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
話しことばの特定の語音をうまく発音できない障害。言語を理解することや言語を構成して伝えることはできるが、発語器官や機能に障害を伴うため語音をうまく調節してつくりだすことができない状態をさす。構音器官そのものの異常による器質性構音障害、麻痺(まひ)性(運動失調性、運動障害性)構音障害、聴覚障害性構音障害、医学的原因によらない機能性構音障害に分類される。
器質性構音障害は、音声(構音)器官における形態的な異常により引き起こされるものである。おもなものとして、先天的な口蓋裂(こうがいれつ)、口蓋垂の形態異常である粘膜下口蓋裂、口唇裂などの形態異常、舌の欠損もしくは形態異常、歯牙(しが)の欠損や異常、ことばが鼻に抜ける鼻咽腔(いんくう)閉鎖不全などのほか、舌癌(がん)などによる舌摘除や上顎(じょうがく)癌の上顎部分摘除などがあげられる。
麻痺性構音障害はディサースリアdysarthriaともよばれ、発声発語器官の運動機能が障害され、運動麻痺や不随意運動、協調運動障害などを伴って、舌や口などを自由に動かせなくなるために起こる。
聴覚障害性構音障害は、聴覚の障害が原因で二次的に構音に障害を伴う。
機能性構音障害は、構音器官の形態的異常も、神経系の障害をもたらす原因も認められない構音障害である。これには、成長しても赤ちゃんことばのままであったり、サ行音・カ行音・ラ行音がタ行音に置き換わったりするといった言語発達の遅れや、周囲の誤った構音習慣を学習することで生ずる障害も含まれる。
[編集部 2016年6月20日]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…話すことの障害は大きく二つに分けることができる。一つは構音障害であり,発音の障害のことで構音器官の障害を原因として起こる。失語症で起こる話しことばの障害はふつうは除くが,近年は構音障害として扱うことがある。…
…さらに,発声時に呼気の漏洩のために発音障害が起こる。すなわち,母音の鼻音化や子音気流の鼻腔漏出を示す開放性鼻声や声門破裂音や咽頭摩擦音による子音(k,t,d,g)の置換,ひずみ,省略などの構音障害を伴い,とくに著しいものではカ行がア行になる。合併症として,側切歯の数,位置および萌出異常による歯列不正や,上気道感染を起こしやすく,扁桃炎や風邪に罹患しやすい。…
※「構音障害」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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