樟紀流花見幕張(読み)クスノキリュウハナミノマクバリ

デジタル大辞泉 「樟紀流花見幕張」の意味・読み・例文・類語

くすのきりゅうはなみのまくばり〔くすのきリウはなみのマクばり〕【樟紀流花見幕張】

歌舞伎狂言時代物。7幕。河竹黙阿弥作。明治3年(1870)東京守田座初演。由井正雪丸橋忠弥らが起こした慶安の変題材にしたもの。別名題「慶安太平記」。通称「丸橋忠弥」。

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精選版 日本国語大辞典 「樟紀流花見幕張」の意味・読み・例文・類語

くすのきりゅうはなみのまくばり‥リウはなみのまくばり【樟紀流花見幕張】

  1. 歌舞伎慶安太平記」の初演名題。

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改訂新版 世界大百科事典 「樟紀流花見幕張」の意味・わかりやすい解説

樟紀流花見幕張 (くすのきりゅうはなみのまくばり)

歌舞伎狂言。時代物。6幕。河竹黙阿弥作。別名題《花菖蒲慶安実記(はなしようぶけいあんじつき)》《慶安太平記》。通称《丸橋忠弥》。1870年(明治3)3月守田座初演。配役は鞠ヶ瀬秋夜(丸橋忠弥)・大竹初蔵を初世市川左団次,音川修理之介(松平伊豆守)・金井谷五郎を沢村訥升(とつしよう)(のちの4世助高屋高助),宇治常悦(由井正雪)・増田八右衛門を4世中村芝翫(しかん),弓師宗四郎(藤四郎)・九郎兵衛を3世中村仲蔵等。実録の《慶安太平記》を劇化したもので,左団次の出世狂言となった。楠正成の末葉である由井正雪は幕府転覆の野望を抱き,鎌倉に道場を開いて同志を糾合する。加担した丸橋忠弥は酔態をよそおい江戸城の堀の水深を測量するが,慧眼の松平伊豆守に見とがめられる。飲酒にふける忠弥を見た舅の弓師藤四郎は,妻を離縁し借金を返却せよと迫る。忠弥は舅を安心させるため一味の陰謀をもらす。驚愕した藤四郎は即座に訴人し,捕手が忠弥宅をとりまく。忠弥は奮戦のすえ捕らえられる。駿府にあった正雪は事の敗れたのを知り,伊豆守の前で割腹自害して果てる。堀端の場面と捕物の立回りが,初演以来評判で,様式を加味した写実的な激しい立回りは,1862年(文久2)5月《三升蒔画巵(みつぐみまきえのさかずき)》で市川市蔵が演じた宮本武蔵の立回りの応用継承とされるが,明治劇壇の模索ぶりを象徴する一つ記念碑的な演出として今日にも受けつぐべき意義がある。
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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「樟紀流花見幕張」の解説

樟紀流花見幕張
くすのきりゅう はなみのまくばり

歌舞伎・浄瑠璃外題
作者
河竹新七(2代) ほか
初演
明治3.3(東京・守田座)

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世界大百科事典(旧版)内の樟紀流花見幕張の言及

【慶安事件】より

…この事件は,浪人問題の重要さを幕閣に知らしめ,浪人発生の主因である大名改易を緩めるなど,幕府の浪人政策を一変させた。また,この事件は,歌舞伎《樟紀流花見幕張(くすのきりゆうはなみのまくばり)》(《慶安太平記》)の題材となっている。【藤井 譲治】。…

【由比正雪(由井正雪)】より

…当代の事件を出版または劇化することが法規に触れるため,舞台化は困難を伴ったが,1729年(享保14)2月竹本座で竹田出雲ら作の《尼御台由井浜出(あまみだいゆいのはまいで)》の浄瑠璃が上演され,正雪は奇井中節の名で登場,ついで歌舞伎では57年(宝暦7)1月大坂姉川座《けいせい由来記(こんげんき)》に志井常悦として登場,また59年9月竹本座の浄瑠璃《太平記菊水之巻》(近松半二ら作)は南北朝に世界をとり,宇治常悦の名で,足利転覆を企てたが最後は南北朝和合を条件として自害する結末となっている。ほかにその改作物《嗚呼忠臣楠氏籏(ああちゆうしんなんしのはた)》(1771年12月,豊竹座),宮城野,信夫の仇討を主筋とした《碁太平記白石噺(ごたいへいきしろいしばなし)》(1780年1月,江戸外記座)などの慶安事件物があるが,いずれも仮名で登場,1870年(明治3)3月守田座での《樟紀流花見幕張(くすのきりゆうはなみのまくばり)》(河竹黙阿弥作)によって,初めて法的に解禁され,通称《慶安太平記》の名で,以来しばしば上演される。しかしこの作でも初演時には実名をはばかり宇治常悦とし,正雪よりも丸橋忠弥に重点が置かれて性格も丸橋がよく描かれている。…

※「樟紀流花見幕張」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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