日本大百科全書(ニッポニカ) 「権利章典(イギリス)」の意味・わかりやすい解説
権利章典(イギリス)
けんりしょうてん
Bill of Rights
イギリスの名誉革命の後を受けて、それに法的根拠を与えるため1689年12月に制定された法律。正式には「臣民の権利と自由を宣言し、王位継承を定める法律」という。同年2月に仮議会がウィリアム3世とメアリー2世の即位に先だって提出していた権利宣言に基づいて作成された。まず革命については、国王ジェームズ2世の数々の違法行為を列挙したうえ、王は政務を放棄したがゆえに王位は空位となったと説明する。次に「古来の自由と権利」確保のため確認すべき事項を13にわたってあげ、国王大権による法律執行停止および適用免除、宗務官裁判所の設置、議会の同意なき課税、平時の常備軍維持など、前王治世中非難の対象となった国王の行為を違法とし、国王に対する請願権、議員選挙および議会内の発言の自由を保障し、議会は頻繁に開かれねばならないと言明した。また王位継承については、メアリー2世に子がない場合には妹のアンとその直系卑族に渡るとされ、ジェームズ2世のカトリックの血筋が排除されるとともに、カトリックの君主もしくはカトリックを配偶者とする君主はイギリス王位につくことはできないと規定された。この法律は、国王大権の行使をチェックしたうえ、国王政府の財源および王位継承順を議会の意思のもとに置いたため、こののちは国政上の議会の地位が確立し、王権と議会との積年の対立に終止符が打たれた。名誉革命の正当性を言明したのみならず、国民の歴史的権利を盾に絶対主義王権を否定したもので、成文憲法をもたないイギリスにおいて、マグナ・カルタ、権利請願と並んで重要な基本法の一つとなった。
[大久保桂子]
『高木八尺・末延三次・宮沢俊義編『人権宣言集』(岩波文庫)』▽『浜林正夫著『イギリス名誉革命史』上下(1981・未来社)』