権利闘争(読み)けんりとうそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「権利闘争」の意味・わかりやすい解説

権利闘争
けんりとうそう

生存権、労働権、団結権、団体行動権などの労働者の基本的権利を、擁護・拡充することを求める労働者や労働組合の闘いのこと。思想・表現・結社の自由などの市民的自由は労働者・労働組合の権利や自由の前提条件であるので、市民的自由を要求する闘いも権利闘争に含められる。これらの権利は、資本主義の成立以来、労働者階級の長年にわたる闘いの成果であり、また工場法労働組合法などの法律として労働者の要求を実現するために役だっている。

 第二次世界大戦前の日本では天皇制ファシズムのもとで労働者や国民は無権利状態に置かれ、西欧諸国ですでに実現していた労働組合の法律による承認も否定されていた。戦後の民主化の過程で労働組合法(1945)、労働基準法(1947)、日本国憲法が成立し、労働者の基本的権利が獲得され、労働組合運動は急速に前進した。しかし、占領政策を転換し弾圧的姿勢を強めたアメリカとその意を受けた日本政府によって、官公労働者(公務員や公共企業体の労働者)から争議権が奪われ、団結権も制限された。これ以降、長期にわたって取り組まれた官公労働者のストライキ権回復闘争や、ILO87号条約(結社の自由及び団結権の保護に関する条約)批准闘争(1965年批准)などが日本の権利闘争の代表的形態である。官公労働者の争議行為をめぐって、全逓中郵事件判決(1966)、都教組事件判決(1969)では最高裁は官公労働者の争議権の尊重を打ち出したが、その後、全農林警職法事件判決(1973)以降一転して厳しい態度を示している。1975年(昭和50)秋には国鉄労働組合を中心とする公労協(公共企業体等労働組合協議会)によってスト権回復を目ざすスト(いわゆる「スト権スト」)が行われたが、不成功に終わった。今日、日本の民間大企業では、使用者や労働組合幹部による労働者に対する思想・信条を理由とする差別や、労働組合活動・政治活動への圧迫が存在しており、職場に自由と民主主義の回復を目ざす闘いも権利闘争の重要な課題となっている。

[伍賀一道]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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